■初夏! 虫たちの季節も盛期へ

夕方、川面を飛び交うエルモンヒラタカゲロウのオス。サイズは小さいですが、一斉に羽化するので見つけやすいです

 カゲロウを始め、水生昆虫の観察をするならこれからが旬です。釣りはもちろん、キャンプや水遊びのついでに観察してみてはいかがでしょうか。川沿いの登山道、遊歩道からも楽しむことができます。日中の水温、気温が高くなってくる初夏は、夕暮れにかけて羽化が盛んになることが多いです。さらに大型の種類の割合も高くなるので、見つけやすいですね。

 渓流のそばは肌寒いときもありますが、どんどん暖かくなるこれからの季節なら、快適に過ごすことができるではないでしょうか。ただ、刺すような虫も増えてくるタイミングです。服装は肌を露出しない方がいいでしょう。

 虫が苦手な人は、ちょっと遠目に眺めるのがおすすめです。渓の優しい夕日に照らされながら、一心不乱に舞う姿は情緒的で、眺めていても飽きることがありません。

■川を見守る大切さ

水流と石の作り出すアート。清らかな瀬の流れ

 水生昆虫の観察をしていると、流れの美しさにも魅せられます。水生昆虫たちは清らかな流れに住むイメージが強いですが、実は種類によって適応する水質条件が異なります。

 水質だけでなく、流れの状態やそれをコントロールしている川床の石の存在なども大切です。人々の安全を守る護岸は重要な事業ですが、場合によっては川の生態系を大きく壊してしまうこともあります。上流部での工事の結果、廃材や油の流入、さらにはセメントが流れ込むとデリケートな生物は一気に死滅し、再び息づくまでに長い時間がかかります。また、見た目に透明度が高いからといっても必ずしも水質が良いとは言えないのも覚えておきたいです。

上部に車道が走っている斜面。増水したときに流れ着いたゴミもあるでしょう。そばにはさほど古くない自転車も落ちていました。自分の体、血管の中だと思うとゾッとします

 ゴミが気になる川もあるでしょう。生活排水も流れ込み、巻き返しに泡とゴミが浮いている光景を見ると胸が締めつけられます。ただ、ゴミに関しては、僕が知る80年代の頃に比べ、ずいぶんと環境が改善された気がします。しかし、河原には「不法投棄」が多いのも悲しい現実です。見た目が汚いだけでなく、水の流れに混ざる汚染水の原因の一つになってしまいます。

 強くもデリケートなのが自然です。環境の変化を見逃さないために、まずは興味を持って楽しく観察することから始めてみてはいかがでしょうか。自然界での川は、人間の肉体に例えると血管のようなもの。健全な河川環境は未来の自然環境の維持へとつながっているはずです。

流れていくモンカゲロウの成虫(メス)。果たして無事に産卵できたのでしょうか……