■荷物の仕分けやすさはタウンユースに軍配

キロ 20の非常にシンプルな荷室

 続いて、荷室の中を見てみましょう。

 ハイキング用のバックパックのジッパーを開いてみると、非常にシンプルなコンパートメントになっていることがわかります。ここもタウンユース用のバックパックと大きく異なるポイントで、ポケット類を必要最低限に絞ることで重量を軽く抑えているのです。

 荷物はスタッフバッグを使って、自身で把握やすいように仕分けることが前提の仕様です。

タウンユース用はポケット類、仕切りが豊富

 続いてタウンユース用のコンパートメントを見ると、違いは一目瞭然です。

  クッション性のあるPCスリーブ、複数の小物用ポケット、ペン収納用のスリーブなどが設けられた至れり尽くせりな造りは、軽さよりも使い勝手を重視していることがよくわかるでしょう。また、ショルダーハーネスにも、イヤホンやカードをさっと取り出せる位置にポケットを搭載しています。

 どちらのモデルもジッパーがガバッと開き、中身が見やすい構造ですが、ルーヌ 20はジッパーを開けた状態で自立するので、荷物の出し入れが非常にしやすいのも特徴です。

■山では軽さとカラーも重要な機能の1つ

格子状に見えるのは、リップストップという引き裂き強度に優れた構造

 ハイキング用のバックパックは、使われている生地の重さも考慮されています。山においては、軽さも無視できない機能の1つと言えます。

 キロ 20の場合、必要な強度を持ちつつも、軽量なナイロンが採用されています。重量は、日帰りハイキングに必要な装備を背負うのにぴったりな20Lサイズで約670g。適度なサポート性や使い勝手を残しつつ、20Lサイズでこの重量はかなり軽い部類です。

 もっと機能や背負い心地をカリカリに削って軽く仕上げたモデルもありますが、初めてハイキング用のバックパックを選ぶなら、軽さだけで選ばないのが正解です。重たい荷物を背負い慣れていないうちは、背負い心地の良さも考慮して選ぶと良いでしょう。

ルーヌ 20はポリエステル90%、ナイロン10%の混紡素材を採用

 対して、街ではハイキングほど軽さを重視しなくて済むため、ルーヌ 20はナイロンよりも耐久性に優れるポリエステルを90%混紡した素材を採用しています。

 重量は同じ20Lサイズで約910g。決して重たくはありませんが、キロ 20との差は240gほどあり、軽量なタイプのダウンジャケット1枚分も違います。

赤や青のバックパックは山中でもよく目立つ

 カラーバリエーションにも、両者の違いが見られることがあります。

 ハイキング用のバックパックは、万が一遭難した時などに山中で視認しやすいことも機能の1つで、派手なカラーリングもラインナップされていることが多いのです。一方、タウンユース用は街馴染みのいいシックなカラーリングが揃います。

 たまに山用の派手なカラーのバックパックを背負っているスーツ姿のビジネスマンを見かけることがありますが、さすがにビジネスシーンには合わないように感じます……。

■タウンユース用でもモデルによってはOKだけど……

まだ暑過ぎない4月、5月は、ハイキングデビューにぴったりな季節です

 ご覧いただいたように、ハイキング用とタウンユース用のバックパックは似たように見えても、ディテールに注目するとこれだけ大きな違いがあります。

 山での快適さの違いは、実際に重たい荷物を詰めて、汗をかきながら背負ってみないとわからない部分ではあります。グレゴリーのようにライトなハイキング程度であれば、山でも十分使えるタウンユース用モデルもあります。しかし、やはりそこは餅は餅屋。特に日増しに暑さが進むこれからの季節のハイキングには、専用のバックパックの方が断然快適です。

 どちらのバックパックを買おうか迷っている方は、山か街か、どちらで使う機会が多くなりそうかをよく考慮して選んでみてください。

◎撮影協力:グレゴリー/サムソナイト・ジャパン https://www.gregory.jp