関東平野のほぼ中央、茨城県つくば市の南部に位置する宝篋山(ほうきょうさん)。標高461mと決して高くはないが、山頂からは素晴らしい眺望が得られる。
近くに双耳峰の筑波山がそびえ、かなたには日光連山や富士山も見える。筑波山が日本百名山として名を馳せる一方、宝篋山は観光客にまだ広く知られていない存在。
しかし、地元の人々や登山愛好者たちからは「静かに楽しめる山」として親しまれ、週末には山頂でおにぎりを頬張る姿がちらほら見られる。この記事では、実際に筆者が歩いた登山ルートを紹介しつつ、自然や歴史、アクセス、そして宝篋山の魅力を余すことなく伝えていきたい。
■登山口(小田休憩所)へのアクセスと準備
出発地点は「小田休憩所」。JR常磐線・土浦駅から関東鉄道バスで約30分。駅からのアクセスが良いため、公共交通機関を利用した日帰り登山が可能だ。車で訪れる場合も、常磐自動車道・桜土浦ICから30分ほどで到着する。小田休憩所には駐車場、トイレ、登山情報を掲示した案内板が整備されており、初めて訪れた人も安心して利用できる。
宝篋山には複数の登山コースが整備されている。「極楽寺コース」「小田城コース」「山口コース」「常願寺コース」などがある。いずれも片道1時間半〜2時間程度で、登りと下りで違うコースを組み合わせると、バリエーション豊かな周回登山が楽しめる。今回筆者は、沢沿いを進む「極楽寺コース」から登り、下山は「山口コース」を利用した。
■沢音を聞きながら歩く「極楽寺コース」
小田休憩所から歩き始めると、すぐに緑のトンネルが出迎えてくれる。道は沢沿いに続き、石橋や木橋を渡りながら進む。せせらぎの音が心地よく、登山のリズムを刻んでくれる。
道中、登山道脇に石仏や石碑が点在する。これは鎌倉時代の高僧・忍性(にんしょう)が残した史跡とされており、宝篋山が信仰対象の山であった歴史的証拠でもある。自然の美しさと歴史の重みが共存するこの山は、ただの里山以上の奥深さを持つ。
極楽寺コースの前半は比較的緩やかで、子どもでも歩きやすい。徐々に傾斜が増し、木の根が張り出したり、階段状の登りが現れる。汗をかきながら登っていくと、やがて樹林帯の切れ間から光が差し込み、山頂が近いことを感じさせてくれる。