月山(がっさん)や鳥海山(ちょうかいさん)などをはじめとした、全国の登山好きに愛される山々を擁する山形県。実はおいしいラーメン店が多数あることをご存知だろうか。山形市は家計支出調査で「ラーメン消費量日本一」に何度も輝くなど、日常の中でラーメンが愛されている地域性がある。
今回は県内で日本海側に位置する庄内地方の人気店を、山形県出身の筆者が厳選。登山や釣りなどのついでに行くのはもちろん、わざわざラーメンのために足を延ばしたくなる、魅力的な一杯を紹介する。
■山形・庄内地方のラーメン事情 人気の「琴系」「月系」とは
ラーメンの名店が数多く存在するが「これぞ山形ラーメン」という王道の形が明確にあるわけではなく、各地方やお店ごとに名物があり、出汁・スープ・具材などもさまざまだ。
たとえば山形市が発祥と言われる「冷やしラーメン」、最上地方で見られる「とりもつラーメン」、置賜(おきたま)地方には味噌ベースの「辛味噌ラーメン」などがある。
今回注目した庄内地方には、鶏ガラや魚介出汁に醤油味のシンプルな「中華そば」のお店が多い。中でも人気の高いラーメン店群を称するものとして「月系」と「琴系」がある。
「月系」とは酒田市の「満月」発祥とされる、ワンタンメンを提供する店舗。トビウオを使った淡麗なスープに、皮の薄いふわふわのワンタンがトッピングされている。
一方「琴系」は、鶴岡市にある「琴平荘(こんぴらそう)」から派生したお店を指す。こちらもトビウオなど魚介出汁と自家製縮れ麺が特徴的な、シンプルな中華そばを提供している。この二つを筆頭に庄内地方には個性豊かなラーメン店がしのぎを削っており、隠れたラーメン激戦区なのである。
■幻のラーメン!? 季節限定・2時間待ち人気店「琴平荘(こんぴらそう)」
この記事で詳しく紹介したいのは、琴系の2店舗。まずはその発祥である琴平荘だ。お店の目の前には日本海が広がり、夏には海水浴客も多く訪れる。もともと琴平荘は旅館を営んでおり、その一部を使い秋冬の閑散期にラーメンを提供していた。旅館の廃業後はラーメン専門店となり、毎年10月1日〜翌年5月31日の間だけ営業している。期間限定かつ昼営業のみのため「幻のラーメン」と呼ばれることもあるとか。
店構えは旅館の建物がそのまま活かされ、大広間(宴会場)が客席となっている。発券機から整理券を取り順番を待つシステムだ。2〜3時間の待ち時間となることもザラにあるので、開店前の朝8時〜10時に整理券を取っておき、周辺を観光して昼時にお店に戻ってくると時間を有効に使える。
呼出時に不在でも、戻った際に声をかければよい。磯釣りや、クラゲが名物の「加茂水族館」といった海を楽しめるスポットがおすすめだ。
琴平荘のラーメンは、鶏ガラとトビウオなどの魚介が効いた出汁に、醤油味の透き通ったスープが基本。スタンダードな「あっさり」と、脂多めの「こってり」から選ぶことができる。自家製のちぢれ麺に、トッピングはチャーシュー、メンマ、刻みねぎ、海苔が乗っている。
太めなのにつるっとした麺と、優しく味わい深いスープが一体となり、これぞ中華そばという旨みが広がり、一口、また一口と箸を運びたくなる。日本海を眺めながら、正統派の一杯を味わう至福をぜひ体験してほしい。
琴平荘 中華そば処
住所 〒999-7463 山形県鶴岡市三瀬巳381-46
電話 0235-73-3230
ホームページURL:https://soba.sanze.jp/
●【MAP】琴平荘 中華そば処
※営業日時はホームページよりご確認ください