「俺は山でも、生米炊いちゃうぜ」
そんな山岳部出身の強者は別として、登山でご飯といえば、長年、アルファ米の独壇場が続いてきた。しかし、ここ数年、フリーズドライの米を使った商品が続々登場し、山飯シーンをザワつかせている。
軽くて腐らないことは、みなさんご存知の通り、双方に共通する特徴だけれど、実際に何がどう違うのかを把握している人は少ないに違いない。ここでは、2つを食べ比べてみつつ、それぞれ山でのメリットとデメリットを考えてみよう。
■2つは似て非なるもの
アルファ米とフリーズドライ米。2つはなんだか似たもの同士のようだが、じつは共通点は多いものの相違点も多い。
この違いは、それぞれの製法によるところが大きい。どちらも炊飯したご飯を乾燥させて作られるのは同じだが、アルファ米は熱風で急速乾燥させたもの。対して、フリーズドライ米は一度冷凍して、減圧した環境で乾燥させて作られる。
開封して、乾燥した状態を見比べてみよう。
アルファ米は透明で、食べこぼして服についた米がカピカピに乾燥してしまっているよう(筆力不足につき、おいしくなさそうな表現で失礼!)なのに対し、フリーズドライ米は真っ白で、米のあられのような状態。触ってみると、アルファ米はカチカチなのに対し、フリーズドライ米はサクサクと脆い。
このサクサクした状態は、フリーズドライ米のメリットの1つ。水で戻さなくても、スナック感覚でそのまま食べることができるのだ。
軽い食感から想像できる通り、重量もフリーズドライに軍配が上がる。水戻し後の出来上がり重量が同じもの(今回検証した2つは、どちらも1袋で260g)で比較すると、アルファ米が乾燥時の重量が100gなのに対し、フリーズドライ米は80gで済む。1食の違いはわずか20gだが、2泊3日の縦走で朝晩1袋ずつ食べるとすると計100g、2人だと200gの違いになると考えると、この重量的メリットは小さくないだろう。
■戻し時間と重量は、フリーズドライ米の圧勝
一番大きな違いは、戻し時間だ。一般的なアルファ米がお湯戻しで15分、水戻しで60分かかるのに対し、フリーズドライ米はお湯ならわずか3分と、カップ麺並みにすぐ戻る。水でも、5分で戻る。
この戻し時間についてはいろいろな考え方があるが、個人的には山ではアルファ米が戻るのを待つ15分を使っておかずを調理することが多いので、早く戻ることに対しては、あまりメリットは感じない。
賞味期限についても、アルファ米は5年なのに対し、フリーズドライ米は8年(商品によって多少異なる)とより保存が効く。これも災害時の非常食用に備蓄にするなら別として、アウトドアで使う方にはあまり関係がない話か。
ちなみに、気になるフリーズドライ米のお値段は、アルファ米の2倍近く。可愛くない値段ではあるが、月に1、2度の山行に使う程度なら気にならない差だ。