長野県北部では里でも雪が降るようになってきました。秋と冬の狭間の季節です。
3,000m級の高山が数多くある信州、長野県ですが、実は魅力的な低山も多くあります。紅葉前線が麓へと下がり、アルプスの峰々が白く雪化粧する頃、登山の対象もまた里に近い山へと移行していきます。
長野県生坂村(いくさかむら)、万平から「京ヶ倉」そして「大城」を巡るコースを歩いてきました。
■紅葉の里から尾根伝いに稜線へ
秋晴れの登山日和、犀川沿いの谷間には霧が立ち込めていました。朝8時の気温は3℃。身震いしながら支度をして歩きだします。動物避けのゲートを開けてしばらく進むと「京ヶ倉登山口」があります。
晴天の日曜日ということもあり、登山口の駐車場はすでにほぼ満車となっていました。あたりはちょうどモミジが赤く色づいており、紅葉狩りを楽しみながら標高を上げていきます。
斜面の傾斜はどんどん増していきます。上部にいくほど、一歩踏み外すと転がって止まらないような急斜面です。そこを縫うように細い道が刻まれています。
樹間が開けた場所から見える景色はすばらしく、足元に広がる岬のような上生坂の里。それを縁取るように蛇行した犀川。グランドキャニオンと呼ばれるのもうなずける壮大な眺めです。奥には雪化粧した北アルプスの山並みがまばゆく輝き、気持ちを高揚させてくれました。
「おおこば見晴台」まで来たら稜線まではもう少しです。ここは休憩適地で登山者が数人休んでいました。トラバースした先、樹間にのぞく澄んだ青空を目指してもうひと登りで稜線です!
■いよいよクライマックス! 快適な稜線歩きから“馬の背”、そして岩場をいく絶景ゾーン
緩やかにアップダウンを繰り返す稜線は快適そのものです。北へと進むと、いよいよ“馬の背”が現れます(巻道もあります)。左右が絶壁となった岩尾根は端にいくほど傾斜を増していて、そのまま崖に吸い込まれそう。ゆっくりと一歩一歩真ん中を歩いていきました。越えたところで振り返ると、曲がりくねる犀川と幾重にも重なった山並みがダイナミックな景色を見せてくれています。
その先で、岩肌に沿うように続く、狭く急な斜面を登ります。ハシゴを登った先の岩場にはクサリも垂れ下がっており、わずかな距離ですが岩稜歩きの醍醐味を味わえる険しさです。
岩場が終われば、京ヶ倉頂上はすぐそこです。風もなくぽかぽかとした陽気で、標高990mの山頂の気温15℃。汗ばんだ体をクールダウンしたくて、日陰に入ってしばし休憩しました。ここからは北側の視界もよく、葉を落とした木々の向こうに白馬の山並みが白く浮き上がっていました。