■日本文化と蜜月な雅の香り! 桐の花

長野県と新潟県の県境で見つけた桐の花。人里のそばに多い

 こちらも紫色の花。桐の花は家紋のモチーフとしても有名ですね。藤の花と似ていますが、小さな花が密集して垂れ下がって咲く藤に対し、花が付いた枝先が天を指すように上を向いています。

 「桐箪笥」は高級箪笥(たんす)として有名ですね。下駄の材としても利用され、美しい木目と軽さが重宝されています。古くから一般的に植えられてきました。

 上品で高貴な甘い香りは雅(みやび)な気持ちになってきます。筆者にはどことなく薬品のような匂いにも感じられます。“よそゆき”の服の匂いというか……、防虫剤?

木の下には花がいっぱい落ちているので、手に取って匂ってみるのも楽しい

 落ちている花を手にとってみました。鼻に近づけると、想像以上に強く香りました。離れたところで、ほのかに香るくらいがちょうどいいのかもしれません。

■“偽”とは失礼! ニセアカシア

新緑の淡い色合いとよく馴染む白い花を咲かせるニセアカシア

 花言葉「甘い誘惑」というだけあって、そばに寄ると甘い香りで誘われるよう。リラックス効果のあるような、どこか懐かしさを感じる香りです。

 成長するとかなりの高さ(10~25m)になり、川辺でも見かけることが多いですね。白い花の房が垂れ下がり、遠目に見ると色違いの藤の花のようにも見えます。離れたくなくなるような癖になる芳香に加え、花も美しいですね。透明感があって、なんとも言えない、独特の色あいの白が、萌黄色の山肌に優しいアクセントをつけます。

 上質なハチミツの原料となることでも知名度があるのではないでしょうか。さらに木材としても利用価値が高いようです。北米原産で和名は「ハリエンジュ」。日本の気候が合っているのかその繁殖力は脅威で、マツやヤナギ林が減少していることが問題視され、侵略的外来種ワースト100に選定されています。棘に迷惑するときもありますが、花の咲いてない時期はさして気にも止めない存在かもしれません。

鋭く長い棘が生えているので要注意です

 名前にニセ(偽)と付くが、実はアカシアとは見た目がまったく違います。同じマメ科だが、こちらはひと足早く春に(ほとんどの種類が)黄色い花を咲かせる。ミモザと呼んだりするが、正式にはこれも違っていてややこしい……。

 急速に進むバーチャルの世界でも、匂いはまだ再現できていないようです。むしろ紙・印刷の方が以前から可能でしたね。微妙な芳香の違いを拙い文章で表現するしかないのが歯がゆいです。アウトドアアクティビティを楽しむのにもってこいの季節、この時期ならではの素敵な香りをぜひ“リアル”で楽しんでみてください。