梅雨明けしたと同時に酷暑が続いている関東甲信越。長野県は涼しいイメージがあるかもしれないが、山に囲まれた地形が多く平地は想像以上に暑い。

 そんなときは、涼しい高原へ涼みに行けばいい。レンゲツツジの見納めと初夏から夏へと移りゆく季節を感じに、長野県の浅間山麓にある「池ノ平湿原」に出かけてきた。

■爽快! 夏空が似合う高層湿原

駐車場の横にあるインフォメーションセンター。週末は人気なので、なるべく早めに到着したい

 「湯ノ丸高原」から山道(舗装してある)を走り池ノ平湿原へ。インフォメーションセンターのある駐車場はすでに標高2,060m! 7月に入ったばかりの取材日は、朝7時で20℃ちょうど。すっきりと晴れた空、からりと乾いた風がそよぎ、心地いい。

“雲上の丘”から見下ろした池ノ平湿原。地形がよくわかる

 天然のカラマツ林に囲まれた「池ノ平湿原」は、かつての三方ヶ峰火山の火口にできた高層湿原。1,100種以上の植物を観察することができるという。周囲を峰々に取り囲まれ、すり鉢状の窪地のような地形もおもしろい。もくもくと空に浮かぶ白い夏の雲が、緑広がる湿原によく似合っていた。

■高原に彩りを添えるレンゲツツジと可憐なコマクサ!

気持ちのいい青空の下、緑によく映えるレンゲツツジのオレンジ

 なんと言ってもこの時期の見どころは、レンゲツツジの鮮やかなオレンジ色と高原の緑とのコントラスト。季節はすでに夏本番を迎えようとしている。そろそろ見納めになりそうだが、素敵な初夏の彩りだ。
日陰が好きなマイヅルソウ、明るい草地にハクサンチドリ……。足元ばかりに気を取られていると、ナナカマドやサラサドウダンツツジなどが頭上で花を咲かせていた。

“三方ヶ峰”のコマクサの群生地。コマクサに会える環境としては手軽な方だろう

 コマクサの群生地は2ヶ所あるが、どちらも柵があって植生を踏みつけないようにしてある。道から離れた場所の株を撮りたいのであれば、望遠レンズの用意があるといい。

 SNSなどで話題になったりして、人気を集めている“白いコマクサ”も咲いていた。周囲のピンクのコマクサが花はすでにフレッシュさを失いかけていたが、この白い株だけはまだ元気よく輝いていた。

■お好みのルートで花々を訪ねるトレッキング

よく整備されていて歩きやすいので、意外なほど短時間で移動できる

 湿原内には植生保護のため木道が敷き詰められている。周りを取り囲む山道には階段状に整備されたりしており、草刈りもされており歩きやすい。道標も頻繁にあるので安心だ。コンパクトに(と言っても広い)湿原だけを巡るもよし。三方ヶ峰(2,040m)や見晴岳(2,095m)など周囲の山々を緩やかにアップダウンしながら大きく回ってもいい。

分岐などには、しっかりした道標があるので心強い

 好みのルートを辿れる分、分岐もたくさんあるので、現在位置をしっかり確認して先へ進むこと。森の中では方向感覚も鈍くなる。思い込みで間違った方向へ行くと全然違う登山口や駐車場に出てしまうかもしれない。万が一のために、地図とコンパスやGPSの携行は、ライトなトレッキングでも心がけておきたい。

東歩道は比較的空いていて静かな森歩きが楽しめる

 今回は駐車場から“東歩道”を歩き、“アヤメ池“から“三方ヶ峰”、“見晴岳“へ。“雲上の丘”、“村境の丘”を経て駐車場に戻った。写真を撮りながら立ち止まっていたり、途中で行ったり来たりを繰り返したが、トータルで約3時間ほど。比較的欲張りに満喫するルートだと思うが、足早に歩けばもっと短いだろう。

 季節が進めば、咲く花も変わっていく。下界の暑さに比べれば快適そのもの。この夏の再訪の想いを胸に、池ノ平湿原をあとにした。