6月に入り山では雪解けが進み、標高の高い山域からも山開きの便りが届き、いよいよ本格的なシーズンが来たと感じられる。

 見晴らしのいい場所からの景色は登山の醍醐味だが、登山の魅力はそれだけではない。雪解けと共に高山植物は開花ラッシュを迎える。今回は筆者がこれまで登山中に見つけた、かわいい高山植物の花を5つ厳選して紹介する。

■奥秩父の盟主・金峰山で見つけた富士の絶景に彩りを添える「キバナシャクナゲ」

 日本百名山の一座に名を連ねる金峰山(きんぷさん・標高2,599m)は山梨県と長野県にまたがり、奥秩父山塊の主脈に位置する山だ。山頂にはシンボルとも言える五丈岩(ごじょういわ)が鎮座し、富士山の絶景を望むことができる。

金峰山山頂から望む富士山と五丈岩

 6月に筆者が訪れた際に目を奪われたのは、森林限界を超えたハイマツ帯に咲くキバナシャクナゲだ。ハイマツの濃い緑とのコントラストがすばらしく、花の色が強調されていた。

6月の金峰山山頂付近のハイマツ帯で見つけたキバナシャクナゲ

 金峰山は6月に入ると「大弛峠(おおだるみとうげ)」への林道の冬季閉鎖が解除されるため、登りやすくなる。スタート地点の標高が2,300mを超えているため、標高差が少なく、危険箇所も少ないことから初心者にもおすすめだ。

■浅間山の外輪山、トーミの頭への急登斜面に群生する「アサマコザクラ」

 長野県と群馬県の境にそびえる浅間山(あさまやま)は、複数の山の総称だ。最高地点は標高2,568mの釜山(かまやま)で、現在も活発な活動を続ける火山のため踏み入ることができない。日本百名山および、花の百名山に選ばれる名峰だが、登山可能である標高2,524mの前掛山(まえかけやま)も現在は立ち入りが規制されている。

浅間山を囲む外輪山。手前の高い山が黒斑山(くろふやま・標高2,404m)

 紹介するのは浅間山を囲うようにある外輪山。6月になると新緑が進み、外輪山の斜面には色とりどりの高山植物が花を咲かせる。

 中でもとりわけかわいいのがアサマコザクラだ。群生するアサマコザクラは紫色の花を咲かせるが、花それぞれ色の濃さが違い、バリエーションが豊富で見ていて飽きない。空の青と、草木の緑、そしてアサマコザクラの紫のコントラストが見事だった。

トーミの頭へ向かう急斜面に群生するアサマコザクラ

 車坂峠から出発すれば、1時間15分ほどでトーミの頭まで到着でき、そこからはどこからでも浅間山を望む眺望を楽しめる。目の前の雄大な浅間山を望みながら足元の高山植物も同時に楽しめる場所だ。

 活動中の火山のため、訪れる前には火山活動の確認と、ヘルメットの持参を忘れないようにしたい。

■四阿山からの下山時に樹林帯で見つけた「クリンソウ」

四阿山の山頂には「信州祠」と「上州祠」の2つの祠がある

 長野県と群馬県にまたがる四阿山(あづまやさん・標高2,354m)でもユニークな花を楽しむことができる。のどかな牧場の向こうに北アルプスを望み、根子岳(ねこだけ・標高2,207m)を経由して四阿山へと登る周回ルートがおすすめだ。筆者が訪れたのは6月の中旬、四阿山山頂からの下山時、樹林帯の中で見つけたのが「クリンソウ」だった。花の百名山として名を連ねているのが根子岳なだけに、四阿山からの下山路でクリンソウに出会えたのはうれしかった。森の中に咲くクリンソウは存在感があり、登山者を楽しませてくれた。

綺麗な輪を作って咲くクリンソウ

 花が9つ咲くからクリンソウではなく、五重塔などの屋根につけられる飾りである「九輪」に形が似ていることが由来となっているそうだ。根子岳と四阿山の周回コースは北アルプスや浅間山の眺望も楽しめることからセットで登るのがおすすめだ。