■メニューのないトラットリアで食い倒れの夜

 骨董市にハイキング、城見学、さらには幽霊伝説の発見と実にバラエティ豊かだった1日の締めくくりに、絶品の郷土料理が味わえるというトラットリアへ出かけた。

 村から離れた丘の上にポツンとある家族経営のトラットリア「Omens(オメンズ)」は、アクセスこそ不便だが、地元のグルメが足しげく通う名店である。予約をしてくれたB&Bの奥さんの話では、「メニューはないから、席に着いたら出てくるものを片っ端から平らげていけばいい」ということだった。テーブルに着くと、「ワインはいる?」と聞かれただけで、後は黙って皿が運ばれるのを待った。

 「アンティパストよ」と言われて出てきたのはなんと「コテキーノ」。脂身をたっぷり含んだ豚肉のサラミは年末料理の定番だが、まさかこの高カロリーを真夏に食すことになるとは。その後再び、「アンティパストよ」と言われて3つの料理が運ばれてきた。

 つまり、アンティパストだけで4種類。これは、覚悟が足りなかったかも知れない、と気づいた時には既に手遅れ。メインのポレンタと牛肉の煮込み、ソーセージを決死の思いで平らげることとなった。それでも途中でギブアップしなかったのは、料理が全て「絶品」だったからに他ならない。噛むほどに味の深みが広がるソーセージを咀嚼しつつ、「次に来るときは早朝から山歩きをしてお腹をすかせて来よう」と自分に言い聞かせた。

豚肉のこってりサラミ「コテキーノ」
2つ目のアンティパストは「バッカラ(塩漬け鱈)の煮込み」
メインディッシュはヴァッレ・ダオスタの伝統料理、トロトロに煮込んだ牛肉と手作りソーセージをポレンタとともにいただく

★ MAP ★

<アクセス>
ヴェール/Verrèsへのアクセスはアオスタが拠点となる。アオスタまではイタリア各地から飛行機または鉄道で。アオスタからヴェールまでは各駅電車で約30分。車で移動する場合はアオスタから高速A5経由、イブレア/Ivrea方面へ40km弱。アオスタからは各種バスも出ている。

 

※本記事はWEBサイト「TABILISTA 」で2019年3月に掲載されたものを元に再構成したものです。

<参考サイト>
ヴェール観光情報(伊語)
http://www.prolocoverres.it/