■念願だった日本アルプスへ
待ちに待った夏休み、日本を訪れるたび日本の山へ行きたがる山好きイタリア人の相棒と二人、兼ねてから憧れていた立山黒部アルペンルートへようやく足を踏み入れた。
拠点となる宿は富山側に取りたかったのだが、調べてみると数も選択肢もとても少ない。熱い湯船に浸かるとすぐにのぼせて気絶しそうになる相棒は、温泉には一切興味なし。富山側の宿はほとんどが温泉旅館で、食事も朝夕和食でたんまり出される。バスで楽々観光してたんまり食べて温泉に浸かるのが目的ならそれは天国だが、いかんせん、山歩きが目的で食事はその都度選びたい我々にとって、本格的な温泉旅館はちょっと気後れしてしまう。あれこれ手を尽くして調べてみた結果、富山側は諦めて長野・扇沢周辺で見つけたリゾートホテルに宿泊することにした。
私も立山は初めてで土地勘もないうえ、登山ルートや山小屋情報など、ネットで調べてもわかりやすい情報が出てこなくて苦労した。そのうえ、泊まりたかった山小屋はどこも料金がバカ高く、旅館同様全て食事付きで選択肢がないことがネックになった。まぁ、何もかも初めてだらけの日本アルプスだし、最初は無理せず観光&ハイキング程度のリサーチ旅だと考えよう、ということで話はまとまった。
履き慣れた登山靴や使い込んだリュック、帽子、サングラスなど、山歩きの装備一式をイタリアから持ち込んで乗り込んだ我々だったが、生憎お天気は雨続き。霧もひどくて一寸先が見えず、恨めしげに空を見上げていたのだが、滞在3日目にようやく青空が顔を出し、勢い込んで立山へ向かった。
■トロリーバスにケーブルカー、盛り沢山な交通機関
今回は初めての立山黒部アルペンルートということで、気を衒わず王道を行くことにした我々は、室堂ターミナルまで公共交通機関を使って行くことにしていた。ホテルから扇沢駅までは路線バスで移動し、そこからトンネル電気バス、黒部ケーブルカー、立山ロープウェイ、立山トンネルトロリーバスを乗り継ぐこと1時間強。やっと室堂平のターミナルに着いた。
車があればもっと早い時間帯にここまで来られたのだが、公共交通機関と徒歩でしか移動できない身としては、時間の不自由だけは諦めるしかない。相棒も、「高山では街と違って交通が不自由なことは世界中どこも同じ。でも、トンネルの中を走る電気バスやケーブルカー、ロープウェイ、いろんな種類の交通機関に乗れるのは楽しいし、効率良く繋がれているのは助かる」と珍しい日本の山の光景にウキウキご満悦だった。