■イタリア・アルプスの山ご飯
イタリアでは、「山好きには食いしん坊が多い」とよく言われる。山登りを計画する時、毎回決まって 「その土地で何が食べられるか」ということが選択肢の項目に加わってくるのもそのせいなのかも知れないが、とにかく山で味わえる郷土料理が大きな楽しみの一つであることは事実だ。
イタリア・アルプスは、フランス、スイスと国境を接し、モンブランやマッターホルンを擁する西アルプス山脈と、オーストリア、ドイツなどに接し、ドロミティ山塊を擁する東アルプス山脈に大きく分けられる。歴史や食文化も異なる西と東のアルプスでは、一口に「山ご飯」と言っても大きな違いがあり、それぞれの土地特有の美食を堪能することがてできる。
今回は、イタリアの西アルプスと東アルプスで楽しめる 山の絶品グルメの数々をご紹介しよう。
■ドイツやオーストリアの味覚が楽しめる東アルプス山脈
南チロル地方に代表される東アルプスのドロミティ山脈一帯では、ドイツやオーストリアの食文化の影響が色濃く残っている。このエリアの山小屋や麓の村では、ウィンナー・ソーセージや豚足の丸焼きスティンコ、パンをお団子にしたカネーデルリ(=クネーデル)、グーラッシュといった伝統料理から、焼きたてのブレーゼル、りんごのパイ・シュトゥルーデルなど、メインディッシュからデザートまでグルメも大満足の山ご飯が楽しめる。もちろん、歩き回った後は冷たいクラフト・ビールもお忘れなく。
●イタリアのアルト・アディジェ地方の郷土料理「カネーデルリ」
南チロルがあるイタリアのアルト・アディジェ地方の郷土料理「カネーデルリ」は、固くなったパンを水や牛乳に浸して柔らかくし、特産のスペックや卵を加えてお団子状にしたもの。熱々のブロード (コンソメスープ)に入れたり、茹でたてにオリーブオイルやパルミジャーノチーズをかけて食べたりする。元々は暖を取るための冬の料理だが、真夏でも肌寒いこの地方の山小屋では一年中用意されている。
●ハンガリーの伝統料理「グーラッシュ」
ハンガリーの伝統料理として有名なグーラッシュは、ドイツやオーストリア、スイスでもポピュラーな料理。東アルプス山脈一帯でも頻繁に食卓にのぼる一皿だ。牛肉をハーブや赤ワインなどと一緒にじっくり煮込んだシチューで、とろとろに柔らかく煮込んだ肉の旨味がたまらない。チロル地方ではポテトの代わりにカネーデルリを添えて提供されることもしばしば。
●豚足の丸焼き「スティンコ」
豚の後ろ足のスネ肉を豪快に丸焼きにしたスティンコ。調理に手間と時間がかかるため、さすがにランチ時の山小屋では食べられる機会は少ないが、下山してから麓の村でゆっくり夕食としていただくには最適の一皿。ジューシーな肉汁たっぷりの豚足にマスタードを付けて豪快にかぶりつくのが最高。お供のクラフト・ビールも思わずお代わりしたくなる。