■『天空の城ラピュタ』のモデルとなった孤高の集落
約2500年前にエトルリア人によって築かれた村チヴィタ・ディ・バーニョレージョは、古来より建築資材として重用されてきた「トゥーフォ(凝灰岩)」の産地の渓谷にポツンと残っている集落である。
もともと、この渓谷の高台には多くの集落があったのだが、風雨や地震などの自然災害の侵食を受けやすい凝灰岩の上に立っていたため少しずつ崩壊していった。周囲の大地が侵食や地滑りで徐々に削られていく中、奇跡的に残ったのがこのチヴィタ・ディ・バーニョレージョの村である。しかし、13世紀から18世紀にかけてこの村も5回の大きな地震に見舞われ、住民の多くは崩壊を恐れて村を離れるようになる。特に18世紀に起こった大地震では、隣接するバーニョレージョの村とチヴィタを結んでいた道が断絶して村は孤立し、その際にほとんどの住民が離村してしまった。
以来、この村は「死にゆく村」と呼ばれるようになっていたが、近年、アジアを中心とする観光客が一年中訪れる観光スポットへと変貌を遂げた。きっかけとなったのは宮崎駿監督のアニメ映画『天空の城ラピュタ』。この映画のモデルとなった村(実際には宮崎監督が着想を得た場所の一つ)として紹介されたお陰で、廃墟の村は一転、世界中から観光客が押し寄せるようになった。ローマから車で約2時間という近さもあり、日帰りの遠足気分で訪れる人も多い。