■オフシーズンの山の街歩きの魅力
アルプスの雪解け水が勢いを増し始めた4月の下旬、復活祭の休暇を利用して北イタリアの小さな山の街、メラーノを訪れた。南チロル地方の中心に位置するこの街は、イタリアとオーストリアの文化が交差する場所であり、アルプスの厳しさと地中海のやわらかさが絶妙に同居している。
ローマから特急列車でボルツァーノまで一気に北上し、そこから南チロルのローカル線に乗り換えて40分。車窓に広がる果てしないりんご畑の風景が心をほっとさせてくれる。メラーノ駅を出ると、空気はまだ冷たく澄んでいたが、町を包む光は明るく、太陽が出ている場所はまるで初夏のような日差しが照りつけていた。駅から歩いて旧市街へと向かうと、石畳の通りと中世の風情を残す建物が現れ、時がゆるやかに流れているように感じられる。
つい先日までは最後のスキーを楽しむ人々で賑わっていた街は、6月から始まる夏のバカンスシーズンを前に束の間の休息を楽しんでいるような穏やかさに満ちている。復活祭休暇を楽しむ人は確かに多いが、それでもピーク時の混雑にはほど遠いゆったりとした空気に包まれている。

パッシリオ川両岸に沿って長い遊歩道が続いている。アルプスの透明な雪解け水に早くも水遊びをする人の姿も見られた

石畳で整備された川沿いの遊歩道と並行するリベルタ通りの広場。ここから中世の塔を潜って奥へ進むと、柱廊が入り組んだ旧市街が現れる