■限られた日時しか見学できない幻想的な庭園

 かつてニューヨーク・タイムズ紙で「世界で最も美しくロマンティックな庭園」と絶賛されたニンファの庭園は、ローマから約80kmほど南下したチステルナ・ディ・ラティーナ市の領内にある。ラツィオ州の天然記念物にも指定されているこの庭園は、世界でも数少ない「幻想世界のハイキングが楽しめる場所」として、イタリア国内のみならず、世界中のアウトドア愛好家を虜にしてきた。

 年間を通して見学できる日数は数えるほどしかないこの庭園は唯一無二の世界観を体現している場所であり、ヴァージニア ウルフやトルーマン カポーティをはじめとする数多くの文化人や芸術家たちの創作活動に多大なインスピレーションを与えてきた。

 現在、ニンファの庭は、園内の自然環境バランスを厳格に保護する目的で、毎年3月から11月の土日のみ、入場者数を限って一般に公開されている。8ヘクタールの広さを誇る庭園内では、日本の紅葉や桜、竹、モクレン、シラカバ、水生アヤメなど 1,300種以上の植物が生息しており、本来は世界各地に点在している多彩な植物が自然のままの姿で共生している。野鳥が囀り鮮やかな蝶たちが舞う美しい庭園はとても幻想的な雰囲気に満ちていて、訪れた人にまるでファンタジー映画の中にいるかのような体験をさせてくれる。

古代ローマ時代から村があったこの場所は、中世時代に「ニンファ村」として知られるようになった。その後貴族の統治下に置かれ、領地の買収や紛争による破壊などの歴史を経て、現在の庭園の姿になった。園内には中世時代の遺跡もそのまま残っている
庭園のシンボルでもあるニンファのは13〜14世紀の建築物
城の前には、『Giochi d’acqua / 水の遊び』と名付けられた広場がある。ニンファ川の源泉から湧き出た澄んだ水が庭園内を巡回している。透明度の高い美しい水と水面に映る植物の姿が、この幻想的な世界を作り出す最も重要な要素となっている
中世時代のニンファ村の遺跡や道をそのまま利用して作り上げた庭園内には、教会や家の遺跡がそこかしこに残っている。中世の村人たちの息遣いを感じる不思議な空間を体験できる