ローマの中心を流れるテヴェレ川沿いの遊歩道は緑に溢れている。イタリアで3番目に大きなテヴェレ川に沿って、ローマ市内には全長35kmに及ぶサイクリングコースがあり、週末には自転車はもちろんウォーキングを楽しむ人々で賑わっている。
日頃から歩くのが大好きなローマっ子の間で近頃、「アーバン・トレッキング」という言葉がよく聞かれるようになった。毎年行われるヨーロッパの都市環境調査で、優れた自然環境、緑の多さなどの点において常にトップクラスをキープしているローマは、市の領土の約80%が広大な緑地と農業地帯で占められている。
■首都で楽しめるアーバン・トレッキング!
観光名所が集まっている旧市街にも、広大な面積を誇るボルゲーゼ公園や四季を彩るさまざまな樹木など緑が多く、市街地から郊外へ向かってさまざまなトレッキング・コースも見つかる。本格的な山登りを目的とした夏のバカンスが始まるまでの間、週末にはこうした都市部のトレッキング・コースで緑と触れ合いながら足慣らしをする人が増えてきている。多数あるアーバン・トレッキングコースの中から、今回は下町テスタッチョからテヴェレ川遊歩道を通ってボタニカル・ガーデンを巡る約10kmのコースをご紹介する。
ローマ市内を横切るテヴェレ川は全長405km、イタリアで3番目に長い川である。アペニン山脈を水源とし、トスカーナ州、ウンブリア州を通ってローマがあるラツィオ州からティレニア海へと注いでいる。このテヴェレ川に沿って州をまたぎ、サイクリングやトレッキングが楽しめるコースが整備されていて、ローマ市内にはそのうち約35kmのコースがある。
下町テスタッチョからボタニカル・ガーデンがあるトラステヴェレエリアまでの遊歩道は約5km。四季折々の草花や水鳥の姿も見られ、都会にいるのを忘れさせてくれる長閑さだ。
古代ローマ時代から物資の輸送手段として船が使われてきたこの街では、中心部を流れるテヴェレ川の存在は非常に重要だった。今では狭い旧市街の石畳の道を運送トラックが窮屈そうに走っているが、古代から中世、ルネッサンス期にかけてはこのテヴェレ川が市民の生活を支える糧を運んでくれたのだ。自転車で颯爽と駆け抜けていくサイクリストを横目に見ながら水辺をゆったり歩いていくと、そんな歴史の名残にひょっこり出くわすこともある。観光客が押し寄せる遺跡ではないものの、古い街ならではの横顔を垣間見れるのもアーバン・トレッキングの醍醐味だ。