2025年の12月。今日ではローマでも街中にイルミネーションや巨大なツリーが飾られるのが当たり前となったが、本来カトリック・キリスト教のクリスマスは質素で厳かなものとされ、派手な装飾やライトは最近までほとんど見られなかった。そんなイタリアのクリスマスで、昔からずっと変わることなく、唯一欠かせない飾りがキリスト生誕の場面を再現したジオラマ「プレゼーぺ」である。

 プレゼーぺの起源は1223年、グレッチョの地にサンクチュアリを設立したアッシジの聖人フランチェスコが、この土地の貴族ジョヴァンニ・ヴェリータと共にキリスト生誕のシーンを表現したのが始まりだった。その時、聖フランチェスコが奇跡を起こし、抱いていた幼子イエスの人形が本物の赤ちゃんになった、という伝説が残っている。以来、世界中からの巡礼者が絶えない村だが、ウンブリアとラツィオの境界にある風光明媚な丘陵地帯に位置するとあって、ハイキング目的で訪れる人も少なくない。ローマからの日帰りハイクとクリスマスの巡礼の両方を体験できる秘境グレッチョを歩いてみた。

■聖フランチェスコの足跡が残る「聖なる谷」の古い集落

 自然をこよなく愛したアッシジ生まれの聖人フランチェスコは、ウンブリア、ラツィオ、トスカーナなど各地の山や森の中を歩き、洞窟で瞑想をし、自身の精神性を高めていった。聖フランチェスコが歩いた自然道は「Valle Santa(聖なる谷)」と呼ばれ、リエーティとグレッチョを結ぶルートは清流や小川、オークや栗の森が広がり、最高の森林浴と歴史的建造物の見学も楽しめるため人気のエリアとなっている。そんな聖なる谷のルート上のハイライトとも言える場所がグレッチョのサンクチュアリで、険しい山の急斜面に張り付くように建設された独特の修道院群は前ローマ法皇も巡礼に訪れた重要なカトリックの聖地となっている。

 一方、サンクチュアリの足元に広がるグレッチョの古い集落にも見どころは多い。かつてこの地に避難してきたギリシャ人たちによって形作られたと言われる村は、古の時代には「グレシア」と呼ばれていた。それが時代と共にグレース、グレッチェ、と変わり、最終的にはグレッチョと呼ばれるようになったのだそうだ。中世時代には要塞として戦略的にも重要なポジションにあった村には、その歴史を物語る塔や跡、教会や城壁跡が今も残っている。

クリスマス市も開かれる村の広場と背後の高台にある大聖天使ミケーレ教会
聖フランチェスコの足跡をたどる壁画で飾られた集落の建物
要塞として機能した中世時代の建物や遺跡があちこちに点在している
村外れにある世界各国から集められたプレゼーぺを展示する博物館