ドロミティ・アルプスの麓に広がる温泉町メラーノから、静かな山の時間を求めてサン・ヴィジリオ山(Monte San Vigilio)へ向かうことにした。メラーノ周辺には2,000m超地点を巡る高地登山道がたくさんあるのだが、4月まではほとんどの山小屋、ケーブルカーなどが閉鎖している。本格的な夏のシーズンが始まるのは5月中旬〜6月らしく、高地トレッキングを楽しむにはまだ時期尚早だったと知った。

 とはいえ、調べてみると近隣の低めの山や高原にはアクセスできる場所もある。サン・ヴィジリオ山もその一つで、一年を通じて家族連れで楽しめるトレッキング・スポットとなっている。

■ヨーロッパで3番目に古いケーブルカー

 メラーノ駅前からバスで20分、隣村のラナ/ Lanaのバスターミナルへ。そこから徒歩3分でケーブルカー乗り場に着く。2023年の夏に全面改装されたばかりというこのケーブルカー、実は1921年から操業しているものでヨーロッパで3番目に古い歴史を持っている。

 まずはこのケーブルカーで山の中腹まで緩やかに登っていく。高度が昇るに従って、眼下には緑いっぱいのリンゴ畑と、赤茶色の屋根が点在する村々のパノラマが広がっていく。ケーブルカーを降りてリフトに乗り継ぐと、ひんやりとした爽やかな空気の中、耳に入るのは鳥のさえずりと風に揺れる木々の葉音だけという癒しのひと時が待っていた。ここでは自然が主役であり、私たちはただその中に身を置かせてもらっているような感覚に包まれる。駅を降りて歩き出すと、すぐに登山道が現れた。道は幅も広く、よく整備されていて歩きやすい。背後を振り返ればメラーノの町並みが見え、その遠景に南アルプスの白い峰々が霞んでいる。標高1,800m付近で空気が変わり、肺の奥まで清らかな冷気が染み渡って行くのを感じた。

ラナのバスターミナルから徒歩3分に位置するケーブルカー乗り場
2023年に全面改装されたケーブルカーは欧州で3番目に古い歴史を持つ
高度が昇るにつれ、周囲のりんご畑とアルプスの山並みのパノラマが広がる
中腹地点でリフトに乗り換え
カラ松の森の中を突っ切るリフト。静寂の中、鳥の囀りが響き渡る
1,800m地点の登山道入り口にある分岐点の標識