■流域の歴史や風土を感じてこそ川旅だ

 川下りが終わっても、もちろんそのまま帰っては意味がない。周囲に素敵な寄り道場所があるのも熊野の魅力。これらをどう旅に絡ませていき、流域の風土や人々の生活を感じられるかで旅の豊かさは決まってくる。

 僕が行った場所を全部挙げたらキリがないので、周辺のおすすめを2つご紹介する。

 今回の川下りのゴール地点である小川口乗船場の近く、乗船チケットを買った瀞流荘(せいりゅうそう)さんでは、なんと “鉱山トロッコに乗って温泉に行く”なんてオツなことができる。この地方では1200年以上も昔から銅が採掘されていて、その鉱山で実際に使われていたトロッコを使用して瀞流荘と湯ノ口温泉を繋いでる。まさに、この場所ならではの温泉体験である。

可愛らしい鉱山トロッコ。味わい深さが半端ない

 そしてもう一つは、その湯ノ口温泉からもう少し東に行ったところにある“丸山千枚田”である。日本の棚田100選にも登録されていて、約1,340枚の田んぼ(日本最大規模!)が傾斜地に点在している光景は圧巻。一時は530枚まで減少していたらしいが、丸山地区住民全員が立ち上がって復元と保全活動をして現在の姿になった。

 先人たちの叡智と、現在の住民たちの熱い思いの背景を知って眺めると、何とも言えずグッとくるものがある。

いつまでも残って欲しい日本の原風景

 こういった場所を行きつつ、通りすがりの集落の神社に行ってみたり、支流の支流を探索してみたり、カーナビにたまたま出てきた謎の観光地に行ったりするのが僕のいつものパターン。そこで出会う人たちとの会話もひっくるめてが川旅だ。

 熊野川流域は、歴史も古く、巡礼地であったこともあって魅力的な場所や文化がたくさんある。ぜひ自分なりの熊野を発見し、深くこの地を旅してほしいと思う。

*掲載情報は著者が訪れた当時のものです。川の状況や交通情報は変わっている場合があります。あらかじめ、ご了承ください。