生活圏内の川なのに、原生林の中をクルーズするかのような雰囲気を味わえる万水川(よろずいがわ)。

 その雰囲気と美しさは“ミニ釧路川”とも比喩され、短い区間ながらも独特な雰囲気を楽しむことができる。世界のクロサワを魅了した水車小屋の風景があったり、美しい湧水で形成されるわさび農場も登場し、なんともバリエーション豊富だ。犀川(さいがわ)合流後は北アルプスを仰ぎ見ながら下っていき、時折スリルも味わうという、なんとも贅沢な時間を味わえる。

■いざ ”夢” の舞台へ

 日常的な水路から始まった旅は、唐突に非日常の原生林クルーズへと変貌した。両岸から迫り出した広葉樹のアーチの中、快適な流れに乗って進んでいく。まるで、どこぞのテーマパークのアトラクションかのようで、どこかわざとらしいほどの楽しさがそこにはある。

生活圏にあるとは思えない光景

 やがて右手前方の樹間から、チラチラと小屋のようなものが見えてきたら、右岸側にボートを寄せて臨戦態勢をとろう。臨戦態勢と書くと大袈裟だが、じつはこの先に蓼川(たでがわ)という小川が合流しており、その川に素早く入って遡上する必要があるからだ。そこで流れに負けて遡上できなかったら、“夢”の舞台には到達できない。わっせわっせと頑張って漕ぎ進もう。

 蓼川は、大王わさび農場の脇を流れる湧水の川だ。そこには美しい水車小屋がいくつか佇んでいる。この場所は、かつて黒澤明監督の『夢』というオムニバス映画内の『水車のある村』というお話の舞台になった場所。その幻想的かつ郷愁を誘う光景は、本当に夢の中にいるかのような美しさがある。

観光客からも応援されたりする(笑)

 水車小屋の少し上流に上陸箇所がある。そこから大王わさび農場に寄って(入場無料)、農場内を散策してみるといいだろう。(濡れた格好ではお店などには入らないように)