熊野川(北山川)は、僕が人生で初めて単独で川下りをし、川旅の魅力にどっぷりハマるきっかけにもなった川だ。圧倒的景観の瀞峡(どろきょう)や、山々の懐に深く抱かれるように滔々と流れる清らかな川。そこを行き交うジェット船が旅情を掻き立て、野営に最適な極上川原がそこかしこに点在している。独特な郷土メシあり、魅力的な温泉ありで、気軽に川旅の王道コースが楽しめる。
■ジェット船を使った旅の計画
今回僕が旅をしている区間は、正式には熊野川支流の“北山川”だ。しかし今回は総じて“熊野川”というくくりにした。その川の流域の文化・歴史・風土もまるっと楽しむのが川旅とするなら、北山川だけでなく熊野川流域を旅してほしいとの思いからだ。
熊野川はいわずと知れた世界遺産の川。“川の参拝道”として知られ、川自体が世界遺産になっているのは世界でもこの熊野川だけだ。中流域の志古(しこ)から瀞峡のある田戸(たど)まで観光ジェット船が往来し、多くの観光客が訪れている。
取り上げる区間は、その観光ジェット船を移動手段として利用して田戸乗船場から小川口乗船場までを下るもの。距離としては8.5kmほどなので1日でも余裕で下れるが、そこをあえて1泊2日でのんびりと旅をする。もちろん人によっては志古まで下ってもいいし、そのまま川の参拝道を進んで熊野速玉大社を目指すビッグな巡礼旅をしてもいいだろう。
下った時期は5月初旬の新緑が美しい時期。ジェット船は年中航行しているので、季節に応じた楽しみ方ができる。増水時や荒天時は運休する場合があるので、事前の確認が必要だ。
※ジェット船は現在災害と新型コロナウイルスの影響で休止中です。再開に関しては随時お調べください。