世界遺産「熊野古道」を舞台に繰り広げられるパックトランピングの旅路。1日目に川旅道具一式を担いで絶景の小雲取越を踏破し、極上の川原で1泊したあとは、いよいよ赤木川の川下りと自転車での周回完成への旅が始まる。
世界で唯一の世界遺産に登録された温泉もありの、魅力的なコースの2日目の記録である。
■清流・赤木川を旅する
赤木川の支流、和田川の川原から2日目の川旅が始まる。車で直接くることができる場所だが、そこをあえて1日かけて熊野古道を越えてきたことで気持ちが昂る。焚き火でゆっくりと朝のコーヒーを楽しみ、川に日が射してきたタイミングで出発。和田川は普段は浅い川だが、この日は増水気味だったため、ちょうどいい水量だ。
和田川の川面からは人工物が見えず、雰囲気が抜群にいい。適度な流れで、漕いでいて心地がよく、時折ちょっとした瀬も現れて爽快さもある。途中岩壁に謎の洞窟のような穴もあったりと、冒険心が駆り立てられるのもいい。
やがて小口川と合流し、和田川は赤木川となる。増水しているとはいえ、赤木川はさすがの透明度をキープしていた。
この川の下り方のコツはたった1つ。それは「できるだけ漕がない」ってことだ。
流れの緩やかなところはパックラフトの上で寝そべって身を任せ、カーブや瀬が来たら「あらよっ」とパドルを操作して越えて行く。とにかく、この素晴らしい時間を味わい尽くすことが正しい下り方だ。
途中、沢が流れ込むところに上陸して軽く登って行くと、素敵なプライベート滝が出迎えてくれる場所がある。滝と滝壺と自分が1つの部屋の中にいるかのような感じで、マイナスイオンの凝縮っぷりが半端ないのだ。寄り道をしてこういった場所を見つけ出すのも、実に楽しいのである。
■大きな堰堤がある手前の場所にてゴール
この川は、「漕いでいく」というより「癒されていく」と言った方が適切な雰囲気を持っている。ゆっくり流されていくとパックラフトの船首にトンボが止まり、その頭上では「ピーヒョロロロ」とトンビが周回する。のんびり区間や適度な瀬や岩の間を抜けて行く区間があったりして、川的にもいろんな要素が詰まっている。
やがて大きな堰堤がある手前にてゴール。和田川からスタートして、距離こそ4.8kmとそんなに長くないが、川旅ってのはこのくらいの距離感が一番ちょうどいい。
その後も慌てずゴールの川原で昼寝をかまし、荷物や服が乾くのを待つ。この時間も僕にとっては旅の中の大切な時間だ。ひとしきり眠ったら、再びパックラフトを担いで次なる旅路へと向かった。