■淵(穏やかな深い場所)には、河童が棲んでいるぞ!

 水流以外での落とし穴は「急な深み」である。いざ川に到着して、喜び勇んで川にジャブジャブ入って行ったはいいが、急に深くなって胸まで水に浸かることがある。慌てて戻ろうとするが、斜面になっている川底の砂利に足を取られて全然戻れない。次第に川の本流の方に体は引っ張られていき、足もつかなくなってパニックに陥るのだ。

 よく「流された子どもを助けにいこうとした大人も溺れた」という二次被害の報道を目にするが、割とこのパターンが多い。子どもが浮き輪で浮かんでるところに行こうとし、上記のような状態に陥って、本流に乗って流されていくか、淵に引きずり込まれるのである。

 淵は一見すると、プールのような雰囲気で流れもなく穏やかに見える。しかし実際その中では、川底の岩に水流が当たって、渦を巻くような複雑な流れが発生している。

 よく「河童に淵にひきずり込まれた」なんて昔話を聞いたりするが、それはそのような縦の流れに引っ張られて起きるもの。こうなると、ライフジャケットを着けていない体は、簡単に沈んでいってしまうのだ。

一見穏やかな淵の中にも、複雑な流れが渦巻いている

■川の流れは、一方向ではない!

 川は上流から下流に一方向に流れている、なんて単純なものではない。流れは非常に複雑で、淵での渦やボイル(下に吸い込まれた流れが浮上する場所)だけではなく、場所によっては上流側に逆流しているところだってある。これらは川に慣れてない人には想像しにくい世界だ。

 強い流れが岩にぶつかっているところでは、たまにその岩の手前で白波が立っていることがある。岩に当たった流れが川底の方に巻かれて、それが手前側に再び浮上して白波を立てているのだ。流されてそういうところに張り付いてしまうと、流れの縦回転に巻き込まれて水中から脱出できなくなったり、水流で岩に押し付けられて身動きができなくなることもある。

 また、大きな岩の水面下の部分が浸食でえぐれている岩(アンダーカットロックという)があるが、その場所はとてつもなく危険である。見分け方としては、やたらと水流が当たっているにもかかわらず、まったく白波が立っていないような岩だ。流されてこの岩に張り付くと、一瞬で川底に体が持っていかれて、その場で人間洗濯機のようにグルグルと回り続けることになる。ライフジャケットを着用していても脱出できない場合があるので、そのような場所には絶対に近づかないようにしたい。

 <後編に続く>

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川の流れは一方向ではない。複雑に渦を巻いている