■ゆうしゃの鎧を身にまとえ!

 そんな冬の川の魅力を味わうためには、やはり徹底的な防寒対策が必要だ。一例として僕の装備を書いておく。

 まず欠かせないものとして、全身完全防水の「フルドライスーツ」の存在が挙げられる。個人的には“ゆうしゃの鎧”と呼んでいる最強アイテムで、少々値段は張るが、これ一着持っているだけでマイケル・ジャクソンになれるのなら安い買い物である。

マイケルというより3億円事件の犯人だ

 フルドライスーツは、ソックスもスーツに一体化しているし、首や手首部分にはガスケットと呼ばれるゴムが肌に密着していて水はほぼ侵入しない。脱ぎ着をする時に使用するジッパーも防水仕様になっており、僕のやつは股間におしっこ用の防水ジッパーも付いていて、要を足す際にいちいち脱ぐ必要がなくて便利だ。

 寒さに応じて、この防水スーツの中に暖かい服を着る。僕の場合、上半身は登山で使うドライレイヤー、ベースレイヤー、厚手のフリース、下半身は厚手のタイツに厚手の靴下って感じ。割と「暑いかな?」ってくらい着込んだほうがいい。暑くなったら川に入ってクールダウンすればいいだけのことだ。着込んでも大丈夫なよう、スーツはワンサイズ大きめを選んでいる。着た時はブカブカでも、この状態で一度川に入り、首のガスケットを手で伸ばして、水圧を利用して中の空気を抜けば問題はない。

 春や秋にウェットスーツで中途半端に川に入るより、フルドライスーツを着ている冬の方が遥かに暖かい。このスーツさえあれば、むしろ冬の方が春秋より快適に川旅が楽しめる。でも、やっぱりデメリットもある。値段が高く、修理の際もそこそこお金がかかるっていう点と、慣れるまでガスケットによる首の締め付けが苦しい(僕はこれが苦手)ってこと。あとは、完全防水といえど、なんだかんだ中で汗をかくと服はビチャっとはなるから、着替えは必要だってことだ。

 

<その他の防寒装備>

 フルドライスーツではカバーしきれないのが、むき出しになっている頭部と手だ。そこで頭部には保温力の高いフードを被り(Marsyas:エアースキン メタリックス・フード)、手には厚手で裏地に暖かい素材が使われている防水グローブを装着(Marsyas:エアーフュージョン2mmグローブ)。この格好なら、真冬の川の中でも苦もなく泳げてしまうのだ(顔面だけは凍るけど)。

暖かさだけじゃなく怪しさもアップする

 シューズに関しては、保温や水抜きに優れたウェーディングシューズ(釣りや沢登りに使うやつ)がいい。ソール部分はラバータイプとフェルトタイプとあるが、苔の多い日本の川ではフェルトタイプがおすすめ。フルドライスーツだと厚手の靴下+スーツの防水靴下の上に履くことになるから、サイズは大きめで、脱ぎ履きがしやすいものを選ぶといい。沢登りみたいにガッツリ歩くわけでもないし、僕はシューズはほぼ消耗品として捉えているので(フェルトの減りとかあるから)、ネットで安めのものを選んでいる。

脱ぎ履きのしやすさは結構重要

 これで冬の川旅の防寒装備はバッチリ。あとはもう、貸し切りの川原でひたすら冬の川の「静」と「生」を楽しむのみ。次回は、そのあたりのお話もしてみたいと思う。

<根尾東谷編へ続く>