■あれよあれよと自身初となる書籍を販売
私自身、何かを生み出したわけでもなく、何か新しいものを作ったわけでもない。ただ、先人の知恵や便利になった焚き火道具を使っているだけだ。しかし、そんな活動を続けているうちに、ライターとしてだけでなく、焚き火のアドバイザーとして声がかかるようになっていった。
いつの間にか、年がら年中、焚き火をするようになった。多い年だと年間100日以上も、煙に燻され続けた。煙の臭いは身体に染みつき、普段でも「猪野くんが通り過ぎると煙り臭い」と言われるほどになった。
良いのか悪いのかは分からないが、書籍を出版することにまでなったのだから、臭くても煙には感謝しかない。それが「焚き火の本」(山と渓谷社刊)だ。この出版はまさかだったが、以降、焚き火マイスターとしての仕事の幅も広がった。
■焚き火の需要って想像以上
雑誌の企画やワークショップ以外にも、とんねるず・石橋貴明さんのフジテレビの番組「石橋、薪を焚く」の監修をしたり、3月16日にオープンしたHiramatsu Hotels『THE HIRAMATSU軽井沢 御代田』のラウンジに置かれる焚き火台のプロデュースもしている。またユニクロYouTubeの音楽(BGM)と映像(BGV)の融合から始まる『LifeWear Music』にも出演中だ。
こんな派手なお仕事もさせていただいているが、実際の仕事はともて地味だ。撮影現場で要望にあった焚き火周りの道具を用意し、焚き火が効率良くに燃えるように薪割りをして待機する。撮影によっては、半日以上待機し続けることも少なくない。仕事の大半が外での撮影なので、寒さや暑さにジッと耐えなくてはならない。体力勝負だし、忍耐力も備えてないといけないが、デスクワークよりは性に合っているのは間違いない。また初心者でも安心して楽しめ焚き火の良さを伝えるため、「日本焚き火協会」を立ち上げ、定期的に検定を開催している。
書いていて自分が何者なのかと思えてくるが、何者でもなくただ焚き火好きのオジサンであることは確かだ。