クリスマスイブの夜に、とあるキャンプ場のイベントで焚き火をしていたときのこと。遠くから肩から毛布をかけた若者グループが近寄ってきて、「うわ~、マジ、火のありがたみを感じる~」と暖を取り始めた。話を聞いてみると、どうやら火起こしに失敗し、焚き火を断念したようだ。このキャンプ場の場所は、日が沈むと一気に氷点下に達してしまい、火がないと苦行でしかない。

 見た目で判断するのは良くないが、彼らはキャンプビギナーのようで『クリスマスキャンプしようぜ』的なノリで来てしまったようにうかがえた。

炎も凍りそうなほどキャンプ場の朝は予想以上に寒い

 「火種を持っていって良いよ」と声をかけたが、焚き火で生気を取り戻したようで「それより、暖かい飲み物を売ってる場所を教えてほしい」とケロッとして、その場を去っていった。

 若者たちは、火の大切さを知ってくれたとは思うが、火起こしに対して苦手意識を持ったことは間違いない……。焚き火マイスターとしては、こんな状況でこそ、しっかりと教えてあげないといけなかったことをいま後悔している。

 翌日、イベントに参加してくれた方たちに話を聞いていると、「寒すぎて火起こしができなかった」という声がちらほらあった。

寒い日のキャンプに焚き火は必須

 確かに気温が氷点下近くになると、普段通りの手順では火起こしが難しくなり、燃えるものも燃えなくなってしまう。焚き火台も薪もキンキンに冷えていて、燃え上がるための熱を蓄えるのに時間がかかってしまうからだ。例えるなら、冷凍の肉をそのまま焼くようなもので、なかなか焼けないし、芯まで熱が伝わらない。

 そこで今回は、氷点下時のひと手間加えた火起こしの仕方をご紹介する。

■まずは火床に薪を敷き詰めてみる

メッシュタイプは通常時でも効果がある

 火起こしの三大要素(薪、酸素、熱)の熱を溜めるために、冷え切った火床に直接、着火剤を置くより、薪を敷き詰めて火床にするといい。金属は“熱しやすく冷めやすい”と言われているが、寒すぎるとちょっとの熱源では温まらない。また、下からの冷気をシャットアウトする役割も果たすしてくれるので、必ず敷くこと。