●南八ヶ岳から北八ヶ岳へと雰囲気が変わるおもしろさ

キレット小屋から赤岳まではガレ場の急登や岩場のトラバースなど、気の抜けないルートが続く。竜頭峰分岐までくれば、赤岳のピークはもうすぐ。山頂から眺める絶景は登った苦労が報われる瞬間だ。
赤岳の北峰から下りて稜線を進み、地蔵ノ頭の先にある横岳は鎖場やハシゴのある岩稜帯。ここは気を引き締めて進みたい。あとは展望のよい砂地が続き、硫黄岳山荘から先は点々と置かれたケルンに導かれながら硫黄岳の山頂へ。ここでしばし爆裂火口跡を鑑賞する。この先の夏沢峠は南八ヶ岳と北八ヶ岳の境にあたる場所。峠を越えると北八ヶ岳らしい苔の生えた樹林帯へと山の雰囲気が変わっていく。
稜線まで上がると砂礫地が広がり、根石岳とその向こうに天狗岳が見える。東天狗岳を越えるとまた樹林帯に入り、中山峠、高見石、白駒池までほぼ森の中を歩く。高見石では眼下に広がる白駒池と佐久側の展望を満喫。そして、白駒池では苔の絨毯の森に癒される。南八ヶ岳の魅力が荒々しい岩稜であるのに対し、北八ヶ岳は森と池が点在する神秘的な雰囲気がたまらない。変化に富んだ八ヶ岳の縦走を惜しみつつ、ゴールとなる麦草峠への道を進む。
■コースのポイント
6. 岩場・ハシゴ・鎖場 緊張が続く赤岳への道

キレット小屋から赤岳(2,899m)のコースタイムは2時間、高低差は約450m。行程は短く感じるが、切れ落ちた岩場のトラバース、鎖場やハシゴをいくつもやり過ごすので緊張感を切らさぬようにルートを進んでいく。手を使ってよじ登る岩壁では、石を落とさぬように気を付けつつ、上からの落石にも注意。
7. 岩峰に小屋が見えたらもうひと登りで赤岳山頂

岩塊のピークに人だかりや山小屋が見えたらそれが赤岳の山頂。南峰直下から上がっていくのだが、近づくとピークが見えないのでルートに沿ってひたすら登るのみ。山頂は八ヶ岳連峰をはじめ、北アルプス、中央アルプスや御嶽山、南アルプスまで名だたる名峰をパノラマで見渡せる絶景だ。
8. 赤岳からさらに北へ 地蔵ノ頭と横岳を抜ける

赤岳頂上山荘が建つ北峰から主稜線を眺めると、稜線に沿って赤岳天望荘、地蔵ノ頭、横岳、硫黄岳、さらにその先には天狗岳が続いている。縦走しながら踏破していくピークはまだいくつもあるのだ。

9. 展望と火口が広がる硫黄岳

硫黄岳は平坦なピークのすぐ脇に爆裂火口跡のダイナミックな絶壁が広がっている。来た道を振り返ると、眼下に硫黄岳山荘、奥には岩峰が特徴的な横岳と主峰赤岳などが見える。なお、硫黄岳は天候が崩れて視界が悪くなるとルートがわかりにくい。ケルンを道しるべにルートの確認を。

10. 西天狗と東天狗2つの峰が並んだ天狗岳

天狗岳は東と西に2つのピークをもつ双耳峰。縦走道は天狗岩という大岩がある東天狗岳(2,640m)を通る。ゆとりがあれば西天狗をピストンしてもいい。また、中山峠から5分の距離には黒百合ヒュッテも。東天狗岳から天狗の奥庭を通れば直接小屋まで行ける。
11. 高見石と白駒池に寄り麦草峠に向かう

中山峠分岐で高見石小屋を経由するルートを進む。小屋の裏手にある高見石からは白駒池や周囲の山並みを一望できる。白駒池の畔に下りたら北八ヶ岳らしい苔むした森を堪能。麦草峠に向かうと、茅野駅と佐久平駅のそれぞれの方面にバスが出ている。バスの本数は少ないので事前に情報収集を。

●ワンポイントアドバイス! 見れたらラッキー! ? 擂鉢池(すりばちいけ)

天狗ノ奥庭にある擂鉢池は黒百合ヒュッテから岩を登ったすぐ上。ここは双耳峰の天狗岳を一望できる展望地。雨や雪解け水が溜まったものなので、水が枯れていることもある。
●DATA

・登山口/駐車場:観音平
・アクセス:車/中央道 小淵沢ICから約15分
電車・バス/JR中央本線 小淵沢駅からタクシーで約20分