日本に富士山があってよかった。友達に誘われて。興味本位で。一生に一度は。富士登山のキッカケがどんな理由であろうとも、その一歩は登山への入り口だ。これから先には楽しさしかない。登山に対するイメージはどんどんよくなるはず。あの富士山に登ったのだから。さあ、世界に誇る日本登山のネクスト・ステージへ。

■AFTER Mt.FUJI をこんな視点でCHOICE!

 地形、食生、風景、文化……。いろいろな顔を持つ多様性こそ日本の魅力である。富士山にはない要素、富士山に似ているけど風土に溶け込む個性的な山など、AFTER FUJIを紹介しよう。

 本記事では、その山の持つ特徴として「パワーを感じる霊山」を紹介。

 日本三霊山といえば富士山と立山、白山。麓からひときわ存在感を放つ山容は、山岳信仰の舞台として日本人の精神を支えてきた。怖いようで威厳を感じる頂。自然だけでなく、日本人がいかに山岳信仰を生活の中に取り入れて生きてきたか? を学べる山旅である。

 「パワーを感じる霊山」は噴火を繰り返し、大きく尖った山塊は神が宿る場所として崇められてきた。富士山に勝るとも劣らぬ地球のパワーを感じられる霊峰へ。

■秋田駒ヶ岳(あきたこまがたけ) 田植えの時期を知らせてくれる活火山

ルート:八合目バス停 → 左回りで阿弥陀池 → 男女岳 → 横岳 → 八合目バス停(日帰り)
標高:1,637m
所在地:秋田県
技術:★★☆☆☆ 体力:★☆☆☆☆
ポイント:標高1,300mの八合目からはじまる山歩き

男岳の山腹から阿弥陀池と男女岳(左)を望む。地名が霊山を物語る

●かつて女人禁制だった修験道を登り、日本一深い湖を見下ろす頂へ

 秋田駒ヶ岳は最高点の男女岳(1,637m)と男岳(1,623m)、女岳(1,512m)の3座をまとめた総称だ。日本二百名山、花の百名山のひとつとして数えられ、東北を代表する名峰である。春、山肌に残る馬形の雪が農作業の目安となったことから地元民に駒ヶ岳と呼ばれ親しまれてきた。もともと山岳信仰の舞台となった霊山で、阿弥陀池や五百羅漢などといった地名がその名残を感じさせる。現役の活火山らしく山頂部には2つのカルデラを持ち、黒く複雑で鋭い地形は鬼が住んでいそうな様相だ。

最高点である標高1637mの男女岳頂上。向かいには男岳と田沢湖

 そんなワイルドな山容だが、標高1,300mの八合目までバスでアクセスでき、ウォーキングのようなのんびりしたハイキングを楽しめる。夏は高山植物、秋は紅葉目当てに多くの観光客が訪れる観光地だ(バスの運行日はマイカー規制が敷かれるので要チェック!)。

麓には豪雪で潤う明るいシラカバやブナの森が広がる

 八合目登山口から最高点の男女岳まではわずか1時間30分の道のり。山頂からは鳥海山や岩手山などの山並みと、紺碧に輝く田沢湖が一望できる。隣の頂、男岳には駒形神社が建立され、古から地元民との結び付きが強い山だと実感できるだろう。

夏になると高山植物が咲き誇る湿原には木道が整備され歩きやすい

 体力的に物足りない人には、古くからの登山道、中生保内コースをおすすめしよう。火山帯へ出る前に、豪雪に育まれたブナや白樺などの森を堪能すればアキコマがまた違った印象に。富士山とは霊山&火山という共通点はあるものの、地形の複雑さ、豊富な高山植物、下山後の秘湯など圧倒的な魅力を抱える山域である。

標高1,623mの男岳頂上には駒形神を祀る駒形神社が建立される

Editor's Eye:下山後は温泉でリカバリー!
 麓には乳頭温泉や田沢湖高原温泉など泉質グッドな極上温泉が湧く。個人的に日帰り温泉でおすすめなのは、それぞれ蟹場温泉と田沢湖スポーツセンターだ。

●MAP