本州の真ん中、長野県と山梨県の間にある八ヶ岳。南は編笠山から北は蓼科山までの南北およそ30kmにわたる山々の総称である。八つの頂で構成されているわけではなく、たくさんの山があることを意味して「八ヶ岳」と名付けられた。ここはその山の頂に比例するように、数々のルートがあり、それぞれの山や登山道に魅力がある。

 山登りはピークを目指す人もいれば、植生を愛でる人もいる。景勝地もあれば、野趣溢れる野天風呂もある。山小屋で人と人の温かみを感じることもあれば、テントで独りの時間を過ごすこともある。

 山登りに対する向き合い方はみんな違って、みんないい。八ヶ岳はそんな多様な山登りができる山である。初心者からエキスパートまで楽しめるこの山で、たくさんの山の楽しみ方を見つけてみよう。

■登山者にとって、八ヶ岳が魅力的で、愛される6つの理由

1. 初級者から上級者まで楽しめる
2. 首都圏からのアクセスが抜群
3. 個性溢れる山小屋がさくさん
4. 一年を通して山を楽しめる
5. エリアによって異なる山歩きが楽しめる
6. 富士山、日本アルプスに並ぶ人気の山域

 

■八ヶ岳縦走(やつがたけじゅうそう)

2泊3日
ルート:観音平 → 編笠山 → 青年小屋(泊)→ 権現岳 → キレット小屋 → 赤岳頂上山荘 → 横岳 → 硫黄岳山荘(泊) → 硫黄岳 → 夏沢峠 → 天狗岳 → 高見石 → 白駒池 → 麦草峠
体力:★★★★★ 技術:★★★★★
行動時間:1日目→4時間、2日目→7時間10分、3日目→6時間10分

●MAP

●南八ヶ岳から北八ヶ岳を2泊3日かけて縦走

 南北に峰が連なる八ヶ岳は、主要な峰を繋げて縦走するルートが延びている。適度なポイントに山小屋やテント場があるので、しっかり下調べをして、無理のない山行計画を立てていこう。今回は南八ヶ岳の観音平から入山し、北八ヶ岳の白駒池までの縦走ルートを紹介。まずは、八ヶ岳最南端の編笠山(標高2,524m)からだ。

 この山はその名の通り編笠を伏せたような姿。山頂部は岩が転がる開放的な場所で、富士山や北岳などの南アルプスを見渡せる。山を下りた先にある青年小屋は、軒先に赤提灯が吊り下がり、「遠い飲み屋」と呼ばれている。また、歩いて5分ほどのところに「乙女の水」という水場もある。この先のキレット小屋は水が枯れていることがあるので、ここで飲料水を補給しておくと安心だ。

 次に登る権現岳(標高2,715m)は南八ヶ岳らしい岩場が続く。山頂は主稜線から少し外れたところで、山頂標識がある場所に剣と祠が祀られている。この先の縦走路には、「源治ハシゴ」などと呼ばれる難所が待つ。ハシゴを降りて鞍部に出ると見晴らしの良い砂礫地が続く。旭岳を越え、少し下ると鞍部にキレット小屋が建っている。

■コースのポイント

1. 観音平から八ヶ岳南端の編笠山を目指す

押手川を越えると岩が増える

 コース前半はゆるやかな樹林帯、押手川を越えると岩が増え、山頂直下は急な登りとなる。山頂は富士山や南アルプス、そしてこれから登る八ヶ岳の山並みが見える。また編笠山から青年小屋に下るあたりでヒカリゴケが見られるポイントも。

2. 青年小屋から先は岩場が増えてくる

青年小屋から樹林帯に入る

 青年小屋から樹林帯に入り、のろし場の標識を過ぎたあたりから岩場が続く。スラブ状の岩稜帯の登りや、岩をトラバースする細い道の鎖場などは慎重に進みたい。ほかにもガレた場所などがあり、足をとられないように注意しながら登っていく。

スラブ状の岩稜帯の登りや、岩をトラバースする細い道の鎖場などは慎重に進みたい

3. 権現岳付近から南八ヶ岳の展望が

権現岳が近づくと南八ヶ岳の山並みが見えてくる

 ぐんぐん登って標高を上げ権現岳が近づいてくると、これから進む南八ヶ岳の山並みが見えてくる。稜線には左から阿弥陀岳、中岳、赤岳が並び、その背後には横岳と雲に隠れた硫黄岳。さらに奥には北八ヶ岳が広がっているはず。手前の小さなピークは旭岳。今から進んでいく縦走路が見える。

4. 源治ハシゴや砂礫地を越える

独特の岩峰の権現岳の山頂

 独特の岩峰の権現岳の山頂を踏み、さらに縦走路を進むと難所の長いハシゴがある。61段20mの垂直のハシゴを降りていくのは緊張するが、力まずに、しかし気を抜かずに一歩ずつ下る。鞍部に降りると平らな砂礫地が広がりホッとする。あとは旭岳を過ぎ、樹林を下ればキレット小屋だ。

61段20mの垂直のハシゴ

5. 鞍部にひっそりと建つキレット小屋

八ヶ岳深層部のキレット鞍部に建つキレット小屋

 権現岳と赤岳の間、八ヶ岳深層部のキレット鞍部に建つキレット小屋。小屋の前から富士山が見えるロケーションのよいところだ。縦走拠点となる山小屋だが、2025年は休業となっているので注意!

ワンポイントアドバイス! 観音平は小淵沢駅からタクシーが便利

観音平登山口はバスが通っていないのでタクシーを利用しよう

 観音平登山口はバスが通っていないのでタクシーを利用する。中央本線の小淵沢駅には駅から登山口を結ぶマウンテンタクシーが運行し、乗り合いで利用できる。特急あずさとの接続もいい。