日本に富士山があってよかった。友達に誘われて。興味本位で。一生に一度は。富士登山のキッカケがどんな理由であろうとも、その一歩は登山への入り口だ。これから先には楽しさしかない。登山に対するイメージはどんどんよくなるはず。あの富士山に登ったのだから。さあ、世界に誇る日本登山のネクスト・ステージへ。
■AFTER Mt.FUJI をこんな視点でCHOICE!
地形、食生、風景、文化……。いろいろな顔を持つ多様性こそ日本の魅力である。富士山にはない要素、富士山に似ているけど風土に溶け込む個性的な山など、AFTER FUJIを紹介しよう。
本記事では、その山の持つ特徴として「山頂部に池塘(ちとう)が広がる山」を紹介。
日本列島のほとんどの山岳地帯は冬になると雪をまとう。その雪がゆっくり溶け、稜線に水溜まりを形成し、高山植物を潤す。それを池塘と呼ぶ。水という水が大地に染み込む乾いた富士山からは考えられない瑞々しい山々は、おもに豪雪地にそびえている。
鋭く乾いた富士山と打って変わって、山頂部が平らで瑞々しい山。豪雪が育てた池塘は、植物を、昆虫を、登山者を集める魅力が詰まっている。
■苗場山(なえばさん) 田んぼのような湿地が広がる
ルート:小赤沢コース3合目 → 苗場山 → 神楽ヶ峰 → 祓川登山口駐車場(日帰り)
標高:2,145m
所在地:新潟県・長野県
技術:★★☆☆☆ 体力:★★★☆☆
ポイント:山頂部の溶岩台地までの登りが勝負

●広大な高層湿原を抱くテーブル・マウンテン
標高2,000mに無数の池塘が漂い、高山植物の宝庫として登山者に人気のテーブルマウンテン、苗場山。日本百名山に数えられ、広い湿地帯が田んぼに見えることから“苗場”と名づけられたという。四方八方から登山道が開拓され、山頂には長野県栄村が運営する苗場山頂ヒュッテがある。

おすすめ登山道は、長野県側の秋山郷からつけられた小赤沢コースだ。小赤沢の民宿に前泊して、早朝に出れば日帰り可能だ。ダケカンバの大木が見事で、山頂の台地に乗るやいなや高層湿原が広がり、振り返ると遠くに北アルプスを望める。山頂までは整備された木道をのんびり絶景ハイキング。

小赤沢コースをピストンするのもいいが、できれば新潟県側のかぐらスキー場へ続く祓川コースを下りたい。山頂部の溶岩台地から急斜面を下って、振り返るとテーブルマウンテンと呼ばれる苗場の山容を見ることができる。道中のドウダンツツジ、ブナなどの紅葉が長く、有意義な1日を締めくくってくれる。
Editor's Eye:高層湿原のデッキでのんびり
ランチや双眼鏡、日焼け対策など準備万端で高層湿原へ。木製のデッキに腰を下ろし、北アルプスを眺めながらゆっくり過ごすのが苗場山の楽しみ方である。
●MAP

■平ヶ岳(ひらがたけ)
ルート:鷹ノ巣登山口 ←→ 台倉山 ←→ 池ノ岳 ←→ 平ヶ岳(日帰り)
標高:2,141m 所在地:新潟県
技術:★★☆☆☆ 体力:★★★★☆
ポイント:小屋もテン場もない12時間勝負

●平らなてっぺんに池を抱え、秘境に聳える最難・日本百名山
その名の通り、山頂部に広大な高層湿原が広がる標高2,141mの平らな山。小屋やテン場が一切なく、往復12時間の長丁場を日帰りでしかアタックできないことから「最難関の百名山」といわれる。

新潟と福島の県境にある鷹ノ巣登山口からスタートし、岩が露出したやせ尾根を登る。振り返ると、朝日を受ける尾瀬・燧ヶ岳が聳えている。人工物の一切ない風景が、日本屈指の秘境を物語る。さすが豪雪地、尾根ルートなのに2つの水場がある。

ようやく池ノ岳に乗ると、青空を映す池塘群となだらかな山頂がお出迎え。木製デッキに腰を下ろし、高層湿原と越後山脈を見渡す時間は格別だ。山頂へは木道が敷かれ、雲の上を歩いているような極楽ハイキングが続く。
●MAP
