本州の真ん中、長野県と山梨県の間にある八ヶ岳。南は編笠山から北は蓼科山までの南北およそ30kmにわたる山々の総称である。八つの頂で構成されているわけではなく、たくさんの山があることを意味して「八ヶ岳」と名付けられた。ここはその山の頂に比例するように、数々のルートがあり、それぞれの山や登山道に魅力がある。
山登りはピークを目指す人もいれば、植生を愛でる人もいる。景勝地もあれば、野趣溢れる野天風呂もある。山小屋で人と人の温かみを感じることもあれば、テントで独りの時間を過ごすこともある。
山登りに対する向き合い方はみんな違って、みんないい。八ヶ岳はそんな多様な山登りができる山である。初心者からエキスパートまで楽しめるこの山で、たくさんの山の楽しみ方を見つけてみよう。
■登山者にとって、八ヶ岳が魅力的で、愛される6つの理由
1. 初級者から上級者まで楽しめる
2. 首都圏からのアクセスが抜群
3. 個性溢れる山小屋がさくさん
4. 一年を通して山を楽しめる
5. エリアによって異なる山歩きが楽しめる
6. 富士山、日本アルプスに並ぶ人気の山域
■縞枯山(しまがれやま)
日帰り
ルート:麦草峠 → 茶臼山 → 縞枯山(往復)
体力:★☆☆☆☆ 技術:★☆☆☆☆
行動時間:2時間50分
●MAP

●山頂は冴えないが、歩いて楽しい穴場の山
針葉樹の原生林や苔に覆われる縞枯山は北八ヶ岳でも人気の山のひとつ。ここは、北八ヶ岳ロープウェイを使うルートと麦草峠から向かうルートの2つに分かれる。
麦草峠から行く場合は、麦草ヒュッテの駐車場が登山口に一番近いが、休日ともなればすぐに満車になるので、徒歩25分離れた白駒池の有料駐車場に停めてもよい。ロープウェイを使って歩く場合は、溶岩台地の上の坪庭自然園の散策も楽しめるなど、景色の変化が豊富な山行となるだろう。
いずれのルートもピストンであれば、登山初心者も大満足の悠々ルートだが、物足りなければ周遊することで、さらに満足感の高い山行になる。
山名の由来ともなる縞枯とは、このエリアの象徴的な景色である、縞枯現象に由来する。これは、おもに針葉樹のシラビソが山腹に縞模様を描くように立ち枯れる現象。数年経つと再生し、今でも詳しい原因が分かっていない自然の神秘。
縞枯現象は南西斜面に集中して見られるが、斑や縞状など様々な模様がある。また、奥秩父などの他の山域でも見かけるが、八ヶ岳で多く見ることができる特徴的な光景だ。
■コースのポイント
1. 白駒池周辺に負けない苔の森を眺めながら行く

麦草峠を出発すると、茶水池を横目に眺めながら苔の森のなかへ入る。ここはあたり一面苔の絨毯となる絶景が広がる。白駒池周辺がとくに苔で有名だが、ここも負けていない。腐植土や倒木、岩にまで苔がびっしりと生え、美しい景色を織りなす。木道が敷かれているので歩きやすい。
2. 茶臼山直下、心臓破りの急登は黙々と歩く

そのまま比較的平坦な苔の森を歩く。シラビソやコメツガなどの針葉樹も美しく、周囲の景色を楽しめる。20分ほど歩くと縞枯山の前座、茶臼山の取り付きになる。ここで一気に標高を稼ぐ急登となる。上を見上げると終わりがないような登り坂だが、およそ20分ほどの坂を頑張って登りたい。
3. 目立たない茶臼山ピークを過ぎて、縞枯山へ

登り終えたら、ふとしたタイミングで分岐のような、茶臼山の山頂が現れる。なだらかな山なので、山頂が平坦なのである。山頂と気づかなそうなピークを標識に従って、縞枯山方面へ。鞍部までは下り坂となる。多少ザレたような足元なので、滑らないように気をつけながら下ろう。
4. 立ち枯れた木々が美しい不思議な森

鞍部には縞枯現象の一部か、不自然に立ち枯れた針葉樹の木々がある。鞍部を過ぎるとおよそ20分ほどの軽い登りに。すると、すぐに山頂へ到着する。山頂は木々に囲まれていて、展望には恵まれない。縞枯山のピーク手前に展望台への分岐があるので、パノラマを見るなら展望台へ行こう。
●ワンポイントアドバイス! 白駒の奥庭、黒曜の森を通る

白駒池駐車場から出発すると、白駒の奥庭と黒曜の森を通れて二度美味しい山行となる。溶岩台地の奥庭を散策して、可愛らしいフウリンゴケを観察しながら森を歩こう。
●DATA

・登山口/駐車場:麦草峠
・アクセス:車/中央道 諏訪ICから50分、中部横断道 八千穂高原ICから30分
電車・バス/JR中央本線・茅野駅からバス1時間11分(10月19日まで毎日運行)
北陸新幹線・佐久平駅からバス1時間36分(土日祝日運行)