■鮎釣り師とのバッティング
これからの季節の川旅を語る以上、避けては通れないのが「釣り師」との話題だ。日本の川は大河が少なく、狭い河川では釣り師と川下りはどうしてもバッティングしてしまう。特に6月初旬は鮎釣りが解禁となる河川が多く、6月から盛夏にかけては鮎釣り最盛期となる。
当然、そんなところに川下りで突っ込んでいったらトラブルは必至で、現に僕もかつて釣り人から石を投げられたこともある。以来、僕は無用なトラブルを避けるため、解禁前の5月に集中して川旅をし、鮎釣り解禁後は夏でも気兼ねなく下れる川(鮎がいない・川幅が広い・観光船が運行しているなど)に行くか、割り切って登山を楽しんでいる。
ここで一度整理しておきたいのは、法的な話と現実的な話の2つ。法的な話でいうと、そもそも川は国民の共有財産で、釣り師にも川下りにも平等にその場で遊ぶ権利が与えられている。釣り師の場合、漁業組合から釣り券を購入して釣りをしているが、それはあくまでも魚を釣る権利であって、川の占有権ではない。
しかし実際の現実的な話でいうと、釣り師としてはたまの休みに釣りをしているところに、上流から音もなく川下りの人たちがワッと流れてくると、正直良い気分はしないもの。僕自身釣りもするし、なんなら漁業組合に入っているので、その気持ちはとてもよくわかる。かといって、川下りの人がそのために夏は我慢しなきゃいけないってのも、それはそれで絶対に違う。
あとはもう“心と心”の話で、同じ川を愛する者同士、譲り合って同じフィールドを楽しめるようにしたいところ。当たり前だが、釣り師に出会ったら必ず挨拶を交わし、できるだけ釣りに影響のない遠目のルートから下ったり、どうしても狭い時は事前に自分の存在をホイッスルなどで知らせ、竿をあげてくれたら感謝を告げること。軽いパックラフトなら、無理せず上陸して釣り師を避けてから下ることも心がけたい。そういった心がけの積み重ねが大切である。
地域によっては、釣り区間と川下り区間を分けるなどの地域ルールを決めている河川(古座川など)や、漁協とラフティング業者が話し合いの末、「この区間の何時から何時までは川下りOK」としている河川(長良川など)があるが、多くの河川はノールールなので夏のトラブルは後を絶たないのが現状だ。
ということで、6月7月は鮎釣りで有名な河川はできるだけ遠慮し、影響が少ない川に行くようにするのも1つの選択肢だ。例えば、北海道の川には鮎が少ないし、海から距離の遠い信濃川上流部(万水川・犀川など)にも鮎は少ないので、そういうところに行くのもいいだろう。また、川で観光船が出ている(または出ていた)川も、釣り師から川は船が通るものと認識されているためトラブルが少ない(北山川・保津川・長瀞など)。あとは川幅が広く、鮎釣り師がいたとしても回避が容易な大きな河川も選択肢となる。
次回は、その大きな河川の例として、夏でも比較的楽しめる「木曽川」を紹介していきたいと思う。