■メスへのプロポーズ大作戦
毎年新たなパートナーとつがいになるのですから、オシドリの冬は、繁殖に向けたプロポーズの季節。野鳥の中には、オスがメスに餌のプレゼント攻めをするという種類もいますが、その美しい羽や姿をアピールするのがオシドリ流。アピールのしかたにはいろいろなバージョンがあるのですが、よく見かけるのが、メスに近づき、水面を赤い嘴でちょんちょんと軽くつつくもの。その時、ロン毛である後頭部の羽を逆立てます。
その次に、大きく胸を反らし、「どうだっ!」とばかりに体を大きく見せるのです。他にも、お尻を横に振ったり、後ろの羽に頭をちょっと隠したりするなど、いくつかのパターンがあります。
■一気に盛り上がりを見せた合コン!
ある日の夕刻、住宅街の中にある遊水池を訪れました。ここは、公園に隣接する立地で、バス通りにも面する一見なんてことのない池です。到着した頃には、水面にはオシドリは全くいませんでした。しかし、よく見ると左手のヤナギの藪の中にオシドリが隠れているのが見えました。
小さく鳴く声や、バタバタと羽ばたく音は聞こえますが、広い水面までは出てきません。まるで、来たるべきチャンスを虎視眈々と狙っているかのようです。
すっと一羽のメスが水面に泳ぎ出してきました。そのタイミングを待っていたのでしょうか。次々とオスが出てきて、メスを囲い込んでしまいます。メスのモテモテぶりがよくわかります。
その中の2羽がメスにぐっと近づいてきました。早くも始まったプロポーズ大作戦。壁ドンに匹敵するかのようなオスのアツのかけ方がものすごいです。すると、これをきっかけに、どこに隠れていたのかと思うくらいのオシドリたちが、次々と姿を現し、一か所に集まりだしました。突然、オシドリたちの合コンが勃発したのです! なんとその数70羽以上にも膨れ上がりました。
なぜか、圧倒的にメスよりもオスの方が多いため、オスのテンションは否が応でも高くなっているようです。オスは、他との違いを見せようとありとあらゆるしぐさでメスに自分の存在を訴え続けます。中には、熱すぎるオスのパワーに嫌気がさすのか、飛んで逃げるようなメスが出てくる始末。
そのうち、メスを奪い合うオス同士の戦いが起こり始めました。嘴を広げ怒りの表情で他のオスを追いかけまわしたり、中には、体をぶつけて取っ組み合いになったりするものも出てきました。ここまでくると、合コンなどという穏やかな感じではなくなってきました。しかし、激しいバトルのピークは、わずか10分ほど。少しずつオシドリは藪の中に戻り、水面は静けさを取り戻していったのです。
オスは、伴侶を得て子孫を残すために、命を繋ぐ行動に全力をつぎ込んでいるように見えました。抱卵、育児はメスにお任せであるものの、オスはオスなりに頑張っている。ここまで言っては、ちょっとオスの肩をもちすぎでしょうか。皆さんがどのように感じるのか、ぜひ近くの場所でオシドリの観察をして、自分の目で確かめてみてください。