理想のサウナ郷建設を目指し、元々荒野だった場所を整備し始めてから早2年。プレオープンの期間を経て、来たる3月、ようやく「THE WATERS」がグランドオープンを迎えようとしている。

 ここでは、“プレ”と呼ぶには長すぎる、昨年の春から約1年にわたる試行錯誤の日々をお伝えする。

◼️<春>実戦で磨かれる

 2025年の春はクラファン支援者へのリターン体験を中心に、とにかく実戦におけるオペレーションの確立がテーマだった。

 サウナ室内の温度と湿度を理想の状態に保つには? どのように蒸気でハーブを蒸したら香りが立つ? これらを知るには、実際に手を動かし、体感するほかなかった。

新緑の季節。生き生きとした緑とクリアブルーな円原川のコントラストが美しい

 自然共生のアウトドアサウナは1日として同じ条件はなく、薪の樹種、太さ、くべ方、くべるタイミングは、外気温や天候で変わる。その変化における“熱癖”も体に叩き込んでいく。

 蒸されるハーブの香りの出方も研究を重ねた。目指したのは、香りを浴びせる”のではなく、包ませる”という感覚だ。

2台のスチームジェネレーター(過熱水蒸気発生装置)。徹底して、息のしやすさ、熱のやさしさ、ハーブの香り立ちにこだわった

 これらは温湿度計だけを見ても答えは出ない。その時々のお客さんの呼吸、表情、座り方、汗の出方も見つつ、好みについて会話しながら探って微調整を繰り返していった。

同じ条件設定は1日もない。だからこそ面白い

 また、ここはサウナが目的ではなく「リトリート」が目的の場所なので、地域の野花を摘んで飾ったり、体験者が少しでも非日常の中で心身の回復を図れるような工夫もした。

THE WATERSの代名詞にもなった「せいろフラワーアート(ハーブを入れるせいろに地域の季節の花を閉じ込める)」

 この期間に体験者のフィードバックも得ながら、ハーブの選定と乾燥の仕方、ハーブ蒸しの方法と蒸気のコントロールなど、細かなオペレーションを徐々に固めていった。

円原川の冷たい水とやかんの水圧が最高。やる側の体力的にはきついけど(笑)

 体験者から返ってきたのは、「過去一番最高のサウナ体験だった」「サウナが苦手だったのに入れた。好きになった」というポジティブな反応。

 試行錯誤の積み重ねが、少しずつ形になっていく。春は、まさに実戦で鍛えられた季節だった。

◼️<夏>川が本気を出す

 7月からは一般受付を開始した。まだプレオープン期間なので、そこまで宣伝はしなかったが、春に体験した方々の発信や口コミのおかげで、ほぼ全ての予約が埋まるという盛況ぶりだった。

 この時期、普通の川なら水温が20〜28℃まで上がり、水風呂としてはぬるすぎる状態になる。しかしTHE WATERSの脇を流れる円原川は、真夏でも脅威の「14℃」をキープし続けた。その理由は、広大な石灰岩地質が生み出す豊富な伏流水の直下だから。地中の水は年中安定して11℃近辺なので、真夏でも14℃、真冬でも11℃という安定感を誇るのだ。しかも、ミネラル豊富な中硬水。キリッとしているのに、刺さらない。冷たいのに、柔らかい。サウナの水風呂として、完璧すぎる水なのだ。

全国70河川以上旅してきた僕が「日本一の水風呂だ」と確信している円原川

 この水に入った瞬間、みんな「有無を言わさない癒し」と「パリッとした開放感」に包まれ、自分の中の動物的DNAが目をさます。街でズレた感覚が、自分の真ん中に戻る瞬間。やはり、うちの主役はあくまで円原川そのものなのだ。

 さらに、雨が降った翌日の朝に晴れると神秘の瞬間がやってくる。円原川の水温が冷たいことで、外気との温度差によって川霧が立つ。そこへ樹間から朝日が差し込むと、光のシャワーが、空間を貫くのだ。

 年に数回の神聖な時間。タイミングよく来れた人は、サウナという言葉では片付けられない、この時期ならではのリトリートを体感することができたのだった。

すべてから祝福され、ただ“居る”ことを肯定されているような気分になる