8月に入り、暑さがますます厳しくなっています。夏といえば海ですね。しかし、神奈川県大磯では、海水浴を楽しむわけでもないのに、早朝から多くの人が集まるスポットがあります。照ヶ崎海岸です。そこには、アオバトがやってくるのです。なぜ、彼らは海にやって来るのでしょうか。
■照ヶ崎海岸とアオバト


伊藤博文、大隈重信、原敬、吉田茂など、8人もの歴代首相が居を構えた神奈川県大磯。そのため、「政界の奥座敷」ともいわれるほどです。その大磯にあるのが照ヶ崎海岸です。今は、遊泳禁止になっているものの、日本で最初の海水浴場として開設された場所でもあります。
主に5月から11月にかけて“期間限定”で照ヶ崎海岸に集まってくる鳥がいます。全身が美しい緑色の「アオバト」です。大磯のアオバトは普段は丹沢山地の森林で生活をしていて、春から夏にかけてヤマザクラ・クワ・ミズキなどの果実を主に食べています。それらの果実には、カリウムは含まれているものの、ナトリウムはほとんど含まれていません。そのため、ナトリウムの補給のために海水を飲みに来ているのではないかと考える研究者が多いようです。
■早朝から飛来するアオバト



台風が過ぎ去った翌日、筆者は、夜明け前に現地到着。防潮堤の上で夜明けを待ちました。すると日が昇る前からアオバトの群れが早速やって来ました。海の中から顔を出す磯に下りようと何度か旋回しましたが、タイミングがつかめなかったのでしょうか、そのまま近くの林に帰っていきます。しかし、その後も何度も飛来。朝日やピンクに染まった海をバックに飛ぶ姿に思わず感嘆の声を上げます。
アオバトは、日の出頃から9時頃までが飛来のピーク。地元の観察団体「こまたん」の調査によると、大きな群れは時に500羽を超えるとのこと。筆者が観察した際も、100羽を優に超える群れが何度か飛来しました。また、早朝4時間での延べ飛来総数も3,000羽に到達することもあるようです。そんな場所は、日本でも数少ないため、照ヶ崎海岸に多くのバードウォッチャーや観光客が集まってくるのです。