クリスマスも過ぎ、スキー場が活気を帯びてくるようになりました。粉雪大好き人間にとっては待望の季節の到来です。しかし、野鳥たちにとっては辛抱の時。大切なえさの一つだった昆虫は卵を産んだりさなぎになったりして、多くが地表から姿を消しました。また、その昆虫を育ててきた植物も今ではひっそりと静まり返っています。
そのため、野鳥たちは、植物の実や種を必死に探して冬を乗り越えようとしています。
■ヒヨドリが食べた種は……
ある日、街中の公園を訪れました。すると、ヒヨドリが、いつもの調子で騒がしく鳴いていました。普段なら見過ごしてしまう日常の風景ですが、手すりにとまったヒヨドリのことがなぜか気になりしばらく様子を見ることにしました。すると、ヒヨドリは足元にあった植物の種を口にくわえました。
ヒヨドリが本来好きなのは、種を含んだ「実」です。その果肉を食べるのです。しかし、ヒヨドリが口にしたのは果肉がなくなった「種」でした。これは食べられない、と判断して捨てたのでしょう。すぐにポイっと捨ててしまいました。
しかし、じつはその種は単なる種ではなく、他の野鳥が実を食べた後にウンチと一緒に出てきた種だったのです!
そんな悲劇を知ってか知らずか、ヒヨドリは、ポイ捨てした種を横目に大きな声で叫びまくっていました。ヒヨドリにとっては何とも言えない残念な日となったことでしょう。
■カラスが食べたのはハスの実
同じ公園での話です。今度は、カラス(ハシボソガラス)が、ハスの「花托(かたく)」をくわえて飛んできました。「花托」とは、ハスの花の中心部のことです。花が咲いているときは色も形もおいしそうなプリンのようです。それが熟すと、めしべ(花托の中に見えるつぶつぶ)の子房が、実となります。枯れて乾燥した花托は、ハチの巣のような美しさがあり、クラフトの材料やインテリアとして人気があります。
カラスは、花托の中に入っているハスの実を器用に取り出すと、口の中にポイっと放り込みました。しかし、すぐにその実を吐き出してしまいました。間違って落とした、というより意図的にポイ捨てしたように見えました。
ハスの実は大変硬く、そのままでは発芽するのが困難です。栽培する際には、実の端をヤスリでこすって芽が出やすいようにする必要があるくらいです。2000年以上前のハスの実から芽が出たこともあるのですから、それくらい丈夫な皮で包まれているのです。
おそらく、カラスはハスの実を食べようとしたものの、あまりの硬さに「こりゃ、食べるの無理ゲー!」と早々にあきらめてしまったのではないでしょうか。苦労して運んできたハスの花托でしたが、これまた残念なことになってしまいました。