9月に入りましたが、下界の厳しい暑さはまだまだ続くようです。そのため、岐阜県と長野県の境にある乗鞍岳は多くのハイカーや観光客でにぎわっています。ハイマツが帯のように広がっている畳平には、この時期、その実を食べにホシガラスが集まってきます。しかし、彼らは、ハイマツを餌とするだけでなく、ハイマツの林を育てる重要な役割を果たしてもいます。

■乗鞍岳畳平へのアクセスは今年から一部変更あり

ハイマツ帯に囲まれるようにして水をたたえる鶴ケ池

 乗鞍岳山頂である畳平へは、マイカーの乗り入れが規制されているため、長野県側は「乗鞍高原」から、岐阜県側は「ほおの木平」からバスに乗り換えて向かいます。長野県側のバスは、今年から完全予約制となりました。事前にWEBから予約をするようにしましょう。復路も事前に予約をしておかないと、混雑時にはバスに乗れず帰ることができない、という事態もあるようです。その場合は、タクシーを呼ばなくてはなりません。山行計画をしっかり立てておくことが必要です。

 また、運行状況や天候の確認も大切です。実は、私が長野県側から始発で入山しようとしたバスが、大雨による道路の損壊によって運休になってしまいました。事前にメールが来ていたのですが、それに気づかず、現地に行ってからそのことを知ることとなってしまいました。天候も、麓の松本市街と乗鞍岳山頂付近では大きく異なるようで、山頂部がそのような悪天候になっていたとは全く知りませんでした。きちんと天候状況の把握もしなければならなかったと、反省しきりの出発となりました。

■高山のハイマツ帯で生息するホシガラス

山小屋の屋根に止まったホシガラス。背中とお腹の白斑は、水玉模様になっていて特に美しく見えます
「ガァ、ガァ」と特徴のあるしわがれた声で鳴くホシガラス

 高山の登山を楽しむ方ならお馴染みのホシガラスは、主に本州中部地方以北の亜高山帯から高山帯、中でもハイマツが分布する山に多く生息します。警戒心はそれほど強くなく、人がいても近くに寄ってくることもあります。

 鳴き声は、人里で「ガー、ガー」と濁った声で鳴くハシボソガラスよりもさらにしわがれた声で鳴きますが、声量はそれほど大きくないので、圧を感じることはありません。また、名前に「ホシ」がつくように、黒褐色の全身に、白斑が散りばめられています。特に、背中やお腹の白斑は、きれいな水玉模様になっていて、美しさに見とれてしまうほどです。

 それにもかかわらず、ライチョウが乗鞍の人気を独り占めしていて、ホシガラスに関心を寄せる人はほとんどいません。私が撮影中も「今、飛んだのライチョウですよね!?」と嬉しそうに聞いてくる観光客がいました。「今のはホシガラスですよ」と答えると、「あぁ、そうですか……」ととても残念そうな顔。一般的には知名度も人気もとても低いのが現実です。ホシガラスの行動を詳しく知れば、“隠れアイドル”ホシガラスの好感度はグッと急上昇すると思うのですが。