夏に高尾山口駅に降り立つと、目の前の川から「ルルルルル……」というカジカガエルの声を聞いたことのある人もいるはずだ。高尾山の山裾を流れる小さな川、案内川。

 冬も深まったある日、その川にふわりと飛んできたのはシラサギ類の中で最大となるダイサギ。豪快な狩りの瞬間を目撃した。

■高尾山の玄関口を流れる案内川

知らずに案内川を渡っている人も多いかも

 案内川は、大垂水峠から南浅川に注ぐ多摩川の支流。全長約8キロの小さな川である。甲州街道に沿って流れていて高尾山口駅付近を通過するので、多くの目に触れているはずだが、その名前を知っている人は意外と少ないだろう。そんなマイナーな案内川は、絶壁のような護岸に囲まれて生物を寄せ付けないような圧迫感のあるゾーンもあるが、水は澄んでいて流域で生息する生物も多い。

■獲物を狙うダイサギ

 高尾山のハイキングを楽しみ、下山した後の疲れを癒すため静かに川面を眺めていたところ、大きな影が舞い降りてきた。シラサギだ。純白の羽。黄色く長い嘴。すっと伸びた白い首。目先は緑色。全長90cm、翼を広げると170cmにもなる、シラサギの仲間で最も大きいダイサギである。

堂々した姿のダイサギ。ツルと間違う人がいるというのもうなずける

 ダイサギは、ゆっくりと歩き始めた。お腹を空かせて獲物を探しているように見える。浅瀬から淵に向かって移動を始めた。そちらの方が、餌となる大きな魚が生息していると本能でわかっているのだろう。

大きな体を支えている黒くてがっちりした足指が目立つ

 ダイサギは、徐々に水深の深い場所に進んでいき、ついには足が全て水中に隠れるほどとなった。しかし、ダイサギは不安な様子を見せるそぶりもない。それどころか、目つきは、さらに鋭さを増してきた。すでに獲物をロックオンしたのだろうか。大きな体がその場から消えたかのように静止した瞬間、「バシャン! 」大きな音が周囲に響き渡った。

足が届く限界となる場所まで踏み込んできたダイサギ