気温が上がるにつれて野菜が大きく成長し、収穫の時期を迎えています。ぐずついた天気の日も多くなりつつあり、早くも梅雨入りの兆しが感じられるようになってきました。また、例年より遅れているとはいえ夏鳥たちが徐々に数を増やし、爽やかなさえずりを響かせています。

 農耕地と接する里山の春の主役といえばキジ。ド派手で大きな体、長い尾羽、響く声。どれをとっても注目度ナンバー1です。今年も、そんなキジの姿をよく目にする季節がやってきました。

■日本の国鳥であるキジ

真っ赤な顔。紫の首。そして複雑な色彩をした背中の羽。繁殖期のキジのオスの美しさには、思わずため息が漏れてしまいます

 キジは、オスが80cm、メスが60cmにもなる大型の野鳥です。長い尾をもち、オスは、繁殖期には特に全身が色鮮やかになります。

 キジといえば、桃太郎の家来として鬼退治に行ったことでも有名です。桃太郎伝説は諸説ありますが、岡山県発祥という説が有力です。キジは岡山県の県鳥にも指定されていて、今年から悲願のJ1昇格を果たしたファジアーノ岡山のキャラクターにもなっています。そもそもファジアーノとは、イタリア語でキジのこと。岡山の県鳥だけでなく国鳥にも指定されていて、日本を代表する野鳥として、多くの人々から親しまれる存在となっています。

■力強いなわばり宣言

キジが大好きな里山の環境です。農耕地とその背後に隠れ家となる森があります
軽トラックの近くに現れたキジのオス。日頃からこのような環境に慣れているのか、あまり動じる気配はありませんでした

 キジは、草原や明るい農耕地のような場所を好んで生息しています。私が訪れた場所も、背後に里山があり、キジが自由に行き来できる環境でした。個体数も多いようで、あちらこちらからキジの鳴く声が聞こえてきました。

 ふと見ると、畑の近くにキジの姿がありました。畑で作業していた方に許可を取って中に入らせていただきましたが、人が近くにいてもキジの警戒心はそれほど強くありません。それほど、普段から里山で人と共存しながら生活しているのでしょう。

まわりの様子をうかがうオス。周囲からは他のオスの声があちらこちらから聞こえてきます
冬、雪上でのキジ。繁殖期に入る前は、顔の赤い部分が特に小さいことがよくわかります。(撮影:高橋康仁)
力強く羽ばたき、「ドドドドッ!」という大きな音を立てます。羽ばたくと前への推進力が出るのか、腰を落とし、両足を前に突き出して踏ん張っていました
最後は全身の力を込めて、大きな声を上げます

 キジは、ゆっくり歩きながら見晴らしのよい高台に出てきました。あたりを見回し、胸を張って立ち止まったかと思うと、力強く羽ばたきました。「母衣打ち(ほろうち)」という繁殖期特有の行動です。羽音は「ドドドドッ!」という大きなもので、周囲に響かせて自分のなわばりを宣言します。と同時に、「ケーン、ケーン」と体全体を震わせながら鳴くのです。あまりに力を入れすぎたのか、白目をむいてしまうほどでした。

 この時期、キジのオスは、顔の周りの赤色の肉ひだが大きく目立つようになります。顔からしてやる気満々で、他のオスを圧倒してしまえ! という作戦のようです。