茨城県・霞ヶ浦(かすみがうら)周辺の水郷エリアでは、寒の時期(おおむね12~2月)になると、今もひっそりと寒タナゴ釣りが楽しまれている。温かい水を好むタナゴを、あえて一年でもっとも水温の低い季節に狙うこの釣りは、狙う場所や時間帯、仕掛け、釣り方を誤ると、まったく魚信が得られない難しさがある。
その一方で、条件がかみ合った瞬間には、冬とは思えない数釣りに恵まれることもある。この「ポイント探しの難しさ」と「釣り方の繊細さ」こそが、日本で古くから楽しまれてきた寒タナゴ釣りの魅力だ。
筆者が釣行したのは1月下旬。大寒を過ぎたばかりで、今季最長最強寒波が襲来していた。冷たい北風に吹かれながら、昨年、好釣果に恵まれた水郷エリアへと向かった。今年もまた、静かな冬の水辺で、小さなタナゴたちに出会えるだろうか。
■実績ポイントが沈黙。不安から始まった寒タナゴ釣り
最初に竿を出したのは、霞ヶ浦沿岸の土手下を流れる川幅2mほどの農業用小水路、いわゆるホソだ。水門を介して湖とつながり、昨年の同時期には寒タナゴの数釣りを楽しめた実績ポイントでもある。
朝8時過ぎに到着すると、意外にも釣り人の姿は見当たらなかった。昨年はいつ訪れても数人の釣り人が並んでいた場所だけに、「もしかして今年は釣れていないのでは?」と不安がよぎる。
仕掛けを入れてもウキはまったく動かない。冬のタナゴは水温が上がり始める時間帯にならないと口を使わないことも多く、この日はそのタイミングを見越して遅めに現地入りしていた。それでも、1時間以上が経過しても、たった一度のアタリすらない。
やがて、筆者の釣りの様子を見に来た地元の人に話を聞いてみると、「去年は良かったけど、今年は全然だよ」との返答が返ってきた。その一言で、このポイントに見切りをつけることを決意した。
■実績地を捨て新規開拓、河川脇の小水路で穴場発見!
その後、別の実績ポイントを回ってみたが状況は変わらず、さらに別の水路では工事の影響で釣りにならなかった。昨年釣れた場所でも、年が変わればまったく反応がなくなる。寒タナゴ釣りでは、こうした年ごとのムラは決して珍しいことではない。
このまま実績に縛られていても仕方がないと判断し、思い切って新しいポイントを探すことにした。向かったのは、霞ヶ浦へ流れ込む河川の脇を流れる小水路で、水門を介して川とつながる場所である。一度も竿を出したことはないが、以前からGoogleマップで存在を確認し、気になっていたポイントのひとつだった。
地面に残る足跡や下草の具合から、過去に釣り人が入った形跡はうかがえる。半信半疑で仕掛けを入れると、5分も経たないうちにウキが小さく揺れ動いた。すかさずアワセを入れると、本命のタナゴ(タイリクバラタナゴ(外来種))が姿を見せた。水深はわずか40cmほど。
頭上から差し込む日差しの中で、タナゴたちが水中をひらりと翻る姿が、うっすらと確認できる。時刻は正午少し前。今日は残された3時間ほどを、このポイントで過ごすことに決めた。
■冬とは思えない高活性、そして予想外の在来種との再会
その後、何度もエサ打ち(ハリにエサを付けて仕掛けを水中に投入すること)を繰り返しているうちに、次第にタナゴが集まり、仕掛けを入れるたびにアタリが出るようになった。冬のタナゴ釣りといえば、水中の糸ウキがわずかに横へずれる程度の、極めて繊細な反応が一般的だ。
しかしこのポイントでは、冬とは思えないほど魚の活性が高く、本命のタナゴばかりが次々と針掛かりした。ほんの数時間前に感じていた絶望感が、まるで嘘のような展開である。
そんな釣りの終盤、ほっそりとした体形の魚が掛かった。一瞬、小ブナかと思ったが、体側にうっすら浮かぶ青い縦縞に目が留まり、違和感を覚えた「これは在来タナゴだ!」。
魚種ごとに見られる特徴的な婚姻色が出ていないため断定は難しいものの、体高やヒレの大きさ、口元のヒゲの長さなどから、これは霞ヶ浦水系の在来種である「アカヒレタビラ」だと判断した。
同じく霞ヶ浦水系の在来種とされるタナゴ(俗にマタナゴ)やヤリタナゴと同様に、水質悪化や外来タナゴとの競合などの影響により、近年は数を大きく減らしている希少なタナゴである。十数年前、筆者が霞ヶ浦に通っていた頃、時おり釣れた記憶がよみがえり、思わず胸が熱くなった。
筆者が使用したタックルと道具は以下のとおりである。
【使用タックル】
ロッド:タナゴ竿 長さ40cm
仕掛け:タナゴ釣り用の連動シモリ仕掛け
エサ:タナゴ用のグルテンエサ(練りエサ)
【あると便利な道具】
小物用の針外し:魚に触れず針が外せる
カウンター(計数器):釣果を数えるためのもの
練りエサ入れ:練りエサの乾燥を防いでくれる
折りたたみ椅子:釣り場での腰掛け
水汲みバケツ:釣った魚を生きたまま一時的に入れておくもの
エアーポンプ:水汲みバケツに入れた魚に酸素を供給するポンプ
小型の観察水槽:釣った魚を横から観察できる
手洗い用の水:ペットボトルに水道水を入れて用意
タオル:濡れた手を拭くために使用