■都市部からアクセスのよい「大菩薩・道志」の事故増加

山系別遭難発生状況(遭難したエリア)。富士山0件、御坂山系2件(三ツ峠、十二ヶ岳)、南アルプス8件(北岳、農鳥岳、薬師岳、白鳳峠、笊が岳など)、八ヶ岳2件(権現岳、編笠山)、秩父山系8件(金峰山、西沢渓谷、七ツ石山など)、大菩薩・道志11件(大菩薩嶺、滝子山、高畑山、倉岳山、百蔵山、馬立山、笹子峠など)『山梨県警発表、2022年10月1日~10月31日』

 秋から冬へ、徐々に入山する標高帯は低くなる傾向にある。山梨県の東側に位置する大菩薩・道志エリアは、他の山域よりも都市圏から中央線でのアクセスが良いためか10月は最多を占めた。続いて、南アルプス山系、秩父山系ともに8件となっている。南アルプス山系では高山帯を多く抱えるが、山小屋の営業しているうちは入山しやすい(10月~11月小屋閉め)。

 また、山域に関わらず「下山中」の遭難は23件30人(全遭難の31件中38人中)となった。今後、凍結高度が標高2,000mを切ってくると、県内のたくさんの山域で登山道が凍り始める。夜間に凍った箇所が日中に融けて、下山する頃にはぬかるんだ泥になるのも厄介だ。泥と氷は、どちらも転倒リスクが高まるので、特に下山時に注意したい。

■遭難者の半分以上は60歳以上

年代別遭難発生状況(遭難者の年代)。10代2人、20代5人、30代2人、40代1人、50代6人、60代11人、70代9人、80代2人『山梨県警発表、2022年10月1日~10月31日』

 年代別で見ると、60~80代はあわせて22人と高齢の遭難者が半数以上を占めた。また、今まで目立たなかった20代が5人となっている。10代の2名は保護者1名と3人で一つのグループで、道に迷い日没を迎えた際ヘッドライトがないため救助要請をしている。

 各年代に遭難者が広がっているので、年齢ごとに多い傾向のある要因があるのか気になり数えてみた。

・20代5名:疲労1名、転倒1名、道迷い3名(ヘッドライトなし)
・30代2名:道迷い2名(ヘッドライトあり、なし各1名)
・40代1名:道迷い(ヘッドライトなし)
・50代6名:滑落1名、転倒1名、道迷い2名、その他1名、行方不明1名
・60代11名:転倒2名、道迷い6名、疲労2名、発病1名(体調不良)
・70代9名:滑落4名、転倒1名、道迷い4名(ヘッドライトなし)
・80代2名:道迷い1名、発病1名(胸の痛み)

 前項(態様別)で触れた道迷いは全年代にあるが、60代が目立つ。道迷い以外では滑落が70代に集中したようだ。突発的な滑落は避けられないが、滑落は至るまでに「道迷い」「転倒」「疲労」「発病」と他の原因を含んでいることもある。体力や集中力は個人差があり比べにくいが、周囲の知人やお客様を見ていると、65歳、70歳、75歳と段階的に減っていくように感じている。私もいずれゆく道なので先輩方の登山を参考に自分を振り返りたいと思う。

 立冬へ向けて日の入り時刻が短くなる今日この頃、想像力を膨らませて予定の山の様子を考えてみよう。準備万端で入山し、最後まで楽しく下山したいですね。お互いにどうぞご安全に。