石狩岳(1,967m)は北海道の大雪山系の東側に位置する石狩連峰にあり、総じて東大雪とも呼ばれている。急峻な山肌にまっすぐ直登するように開削された「シュナイダーコース」は、北海道でも有数の急登ルートである。

 健脚者向けの日帰りルートだが、登り切った先には大雪山の大展望が広がる名峰だ。石狩川源流域を挟んで眺める大雪山の展望は格別だ。

■北海道有数の急登、シュナイダーコースへ

まさに急登、シュナイダーコースを登る登山者

 日本二百名山のひとつでもある石狩岳。日本三大河川のひとつである石狩川の水源であることからこの名前がついた山である。この一帯に登山道が作られた当初は山中泊での縦走をしなければ山頂へたどり着けない遠い山だったが、1961年に最短ルートのシュナイダーコースが開削され、健脚者であれば日帰り登山が可能となった。

 このシュナイダーコースの名の由来は野球のスライダーが元となっているという説があるのだが、急斜面をまっすぐ直登し、稜線から山頂に向かって左に曲がるルートがスライダーのイメージと重なったためだろう。

 急斜面を登る登山道は数多くあるが、このシュナイダーコースは急斜面をジグザクに登ることなく、ひたすらまっすぐ登る急登なのだ。急そうに見えて歩きやすい急登ではなく、本当にずっと続くまっすぐな急登。登山口から頂上までの標高差は1,163mだが、急登部分だけでは標高差850mを2kmで一気に登る、名物コースだ。

■百名山に選ばれることのなかった秀峰

急登を登り切った肩から石狩岳頂上へ向かう

 石狩岳の登山口は国道273号線から林道へ入り、約14km進んだ先にある。駐車スペースは広く、仮設トイレも設置されているが、他の大雪山の山々を比べると入山者は少なく、静かな登山を楽しめる山域だ。

 東大雪の山々はこの石狩岳のほかにもニペソツ山などの秀峰が立ち並ぶが、いずれも日本百名山には選定されなかったため、過度な登山道整備や開発は進められてこなかった。当然ながら山小屋や避難小屋の類いは一切ない。良くも悪くも、百名山に選ばれなかったことで昔と変わらぬ山が残り、北海道登山の黎明期と変わらぬ山登りを体験できるのだ。それ故に純粋な登山を楽しむ人たちに愛されている山だ。