去年、一昨年と暖冬だったのに比べて積雪が例年通りだった今年は、6月初旬の現在でも残雪が目立つ印象がある。雪が多く残っていると、登山道が隠れて道迷いや踏み抜きによる事故などが増えそうで懸念していたのだが、先日、福島県桧枝岐村でバス運転手さんに「雪解けちょっと遅くないですか?」と話しかけたら、「いやあ、こんなもんだと思うよ」ということだった。
2022年5月(山梨県警発表)の山岳遭難発生状況を振り返り、山梨県在住の登山ガイドである渡辺佐智が県警地域課へのインタビューを行い、遭難事故データをもとに5月の傾向を解説していく。
■2022年5月の山梨県の遭難
山梨県の5月の遭難件数は10件あり、先月から7件増加した。懸念されたゴールデンウイーク期間中の事故は、南アルプス山系で2件起きている。
山系別では、瑞牆山での2件を含めた秩父山系が目立った。全体では、先月までは少なかった2,000m付近から3,000m級の山岳エリア(大菩薩・道志エリアの黒岳1,987m含む)が5件と半数を占めた。季節が進み少しづつ登る山の選択肢が広がっていることがわかる。
■下山時の事故が目立つ
5月の態様別は、道迷いと転倒が特徴的だった。道迷い3件中2件と、転倒3件中2件は下山中に起きている。1日の後半になることが多い下山時は、疲れがたまり、集中力が切れやすく、小さな失敗が思いがけない事態につながることは実感するところだ。ちなみに、道迷い3件中残り1件は犬の散歩中に、転倒の残り1件は渓流釣り中に起きている。
気になったのは、発病の2件(急性心不全、低体温症)とも12時台の山頂付近(茅ヶ岳、瑞牆山)で発症している。個人的なところでは、最近、午前中に登山をし、昼休憩の後の山頂で腹痛があるお客様がいらした。山頂のあたりは登山の区切りにもなり、時間帯的にも体調変化が出やすいのだろうか。