観測史上最速の「梅雨明けしたとみられる」発表(気象庁)に驚いた6月であった。月後半の猛暑では、山の上から暑さで霞む街を眺めて「降りたくないなぁ」と感じたことを覚えている。
2022年6月(山梨県警発表)の山岳遭難発生状況を振り返り、山梨県在住の登山ガイドである渡辺佐智が県警地域課へのインタビューを行い、遭難事故データをもとに6月の傾向を解説していく。
■2022年6月の山梨県の遭難事故
山梨県の6月の遭難件数は18件であり、先月から8件増加した。5月は10件、10名の遭難者であったが、6月は18件、25名と件数に対して遭難者数が多いのが特徴的だ。これは複数人のグループ登山で全員が遭難したことを意味する。(後述で補足)
山系別では、高所を抱える南アルプス山系が5件と増えており、これまで目立っていた秩父山系と並んだ。その南アルプス山系では、6月28日から30日の晴れた3日間に5件全ての遭難が集中しており、これは27日の関東甲信越の梅雨明け発表により、登山者が動いたのではないだろうか。
個人的には、6月第3週から猛暑日が続き、翌週の天気予報が全て“晴れ”に変わったことをうけて、7月上旬の山行予定を前倒しできないか、調整していたことを思い出す。“晴れ”が続く予報は、予定は立てやすいが、人気の山は入山者が増えて危ないので、できるだけ外したいと考えている。
■道迷い遭難者の割合は5割以上!
件数が増えたことにより、先月に比べて遭難要因も多様になった。それでも、“道迷いに占める割合が多い”のが変わらないのは特筆すべきだ。
・道迷いは3件から7件へ増えた。
・滑落4件中1件は、道に迷った上の滑落であり、潜在的には道迷い遭難である。
・道迷いに関わる遭難者は14名(上記1名含む)。
・全遭難者25名に占める、道迷い遭難者の割合は、5割以上。
かねてより言われている、“道迷いを防ぐことが、遭難防止の第一歩”であることがよくわかる。