雪解けが早すぎて、雪山登山の足元の装備をどうすべきか迷っている。どこまで踏み抜き対策をするか、小回りが利く足元のほうがよいか、悩ましい。雪で埋まっているはずの沢筋から聞こえる水音は、今シーズンの残雪期の短さを予感させる。
2023年1-2月(山梨県警発表)の山岳遭難発生状況を振り返り、山梨県在住の登山ガイドである渡辺佐智が県警地域課へのインタビューを行い、遭難事故データをもとに冬季(2ヵ月分)の傾向を解説していく。
■滑落事故の代償は大きい
山梨県内の冬の山岳エリアは積雪が無くても、日の当たらない斜面や、午前中は凍っていることも多く、低山でもその想定をした準備が必要だ。2022年10月までは道迷いが最多の原因だったが、11月から滑落・転倒が最多に転じている。2ヵ月の間で多かった遭難原因は滑落、転倒の順で、その結果を見てみる。
・滑落5人:死亡3人、重傷1人、無事救助1人
・転倒4人:重傷4人
数字を見るまでは、滑落の方が圧倒的に悪い結果で、転倒は軽傷または無事救助が多いかと思っていたが、並べてみると転んだ(転倒)だけでも、山の中では深刻な結果になっていることがわかる。
転倒4人は、4人とも下山中に起きている。山の中では起伏によってアップダウンを繰り返しながら、登り下りして進んでいく。一見小さな下りでも、足を捻挫したり骨折することはありうる。案外、いかにも危険な場所ではなく、気を抜いている何でもない場所で事故を起こしたりするものだ。下りにはいったら、一呼吸おいたり、声かけ(自分にも仲間にも)をするのも有効だ。
■重大な結果の遭難は6割以上
1月~2月は重大な結果になる遭難が全体の6割以上を占めた。道迷いが多い月は無事救助が多くなり、滑落や転倒など身体に関わる遭難の場合には結果が悪くなる。転倒した場合、腕の怪我なら下山できるが、足の怪我で歩けない場合は救助を待つしかない。
怪我をしたまま留まっている間、気持ちを落ち着かせるには保温加温できる装備が役立つ。複数人で入山する場合は、そんな時に負傷者をおいて先に家に帰ってしまうような関係の人とは、絶対に登山をやめた方がいい。登山経験者はそんなことはありえないと思うだろうが、そんな事例が目立ってきている。