■ハンモックハイキングは「自然と調和するハイキング」
自然のなかに足を踏み入れるとき、ハイカーはあくまで訪問者です。本来そこにいるはずのない存在である以上、訪れたことによる影響について考えなければなりません。ハイキングという行為を長く楽しむためには、ただ自然保護を唱えるのではなく、各々が自然へのインパクトをなるべく最小限に抑え、環境保全に努める責任があります。
ハンモックハイキングが盛んなアメリカでは、土壌や植生へのインパクトを軽減できる道具として(テントを張るには整地が必要。人間が一定のエリアを踏み固めることになるため)、テントよりもハンモックが積極的に取り入れられています。ユーザー数の増加に伴い、支点となる樹木へのダメージを抑えるために、設営用の道具も進化してきました。
また、樹林帯であれば設営地選択の自由度が高いことから、テント設営地のように繰り返し同じ場所を使用することが少なく、インパクトの分散にも有効とされています。ハンモックは地面に依存しないことで、ハイカーには快適さを、環境にはインパクトの軽減をもたらすのです。
森の中でハンモックの揺れに身をまかせていると、緊張感が解けていくのがよくわかります。テントの中のように、外界と隔てた空間にいて感じる「防御された安心感」とは違い、何にも守られていないのに緊張していない状態、まるでその環境に溶け込んでいるような安心感がハンモックにはあるのです。
このような理由から、ハンモックハイキングは「自然と調和するハイキング」といえるのではないでしょうか。ハンモックには、自然と調和して過ごすヒントがあるような気がしてなりません。
<※本記事は『ハンモックハイキング』(山と溪谷社)を一部抜粋、加筆、再編集したものです>