■単発ではなく、継続できる管理資金調達の提案

日本の国立公園管理は、どうしても山小屋など民間の力に頼る部分が大きい

 では、どうすれば日本の国立公園が保全されつつ、人々が楽しめる場であり続けることができるのだろう。アイデアの1つとして、サブスク型クラウドファンディングはどうだろう。2021年9月、北アルプス南部地域では、登山道維持・管理のための寄付金を募る実証実験が行われた。その結果、1ヶ月で約550万円の寄付が集まったそうだ。

 さまざまな意識調査を見ても、青春時代に登山ブームだった中高年以上の人は日本の自然を憂いている。だから寄付はとても良いと思う。しかし、ここで大事なポイントは、単発ではなくサブスクで行うことだ。単発だとお金が集まってから、その金額でなにができるかを考えることになるが、サブスクなら予算の見通しが立てられるので、計画的に管理を進めることができる。筆者も日本の山が保全されるなら、喜んで月1000円くらい払うというものだ。

ニュージーランドのトレイルにかけられた立派な橋

 また、日本とはスタイルが違うニュージーランドからも学べることはあると思う。DOCは2021年2月に「Heritage and Visitor Strategy(遺産とビジター戦略)」を打ち出した。それによると、環境保全のためこれまでは入場制限や寄付等を行ってきたが、今後はビジターが直接的にニュージーランドの自然に貢献できる仕組みを作るようだ。

 環境保全大臣のキリ・アランは、この戦略に際し、「voluntourism(ボランティア旅行)」について言及している。つまり、国立公園の自然を消費するようなアクティビティだけでなく、在来の樹木を植えたり、野生動物の調査をしたり、ビーチをクリーンアップしたりするような、貢献型アクティビティツアーが企画されてゆくのではないだろうか。

 このように、課題に対して予算をつけたり制限を設けるだけでなく、市民力を使い、なおかつ楽しみながら解決してゆこうとする姿勢は素晴らしいと感じた。

<後編に続く>
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