今回紹介するのは新潟県にある日本百名山のひとつ、標高2003mの越後駒ヶ岳。日本有数の豪雪地で水が豊富なことから、ブナ、ミズナラ、トチノキなどの落葉広葉樹の森が素晴らしく、イヌワシやツキノワグマなども生息している山域だ。また、奥只見湖に注ぐ北ノ又川をはじめ、多くの沢にはイワナが生息し、秋になると遡上する姿も見られる。
自然を守る活動が古くから活発で、小説家・開高健が会長となり、地元民や渓流釣りファンが1975年に立ち上げた「奥只見の魚を育てる会」が尽力し、北ノ又川の上流は1981年に永年禁漁区となった。筆者は25年以上、北ノ又川の畔に建つ湖山荘という温泉宿を拠点とし、5月の山スキーから10月の紅葉シーズンまで、よく遊ばせてもらっている。
7月頭の越後駒ヶ岳は、登山口付近では夏の始めの森を楽しむことができるが、山頂に近づくほど残雪の影響で季節の進みが遅くなり、春の植物が楽しめるため、1日で2度美味しい山だ。しかし、それだけに高低差がきつく、またルートの距離も長いことから体力を要する山でもある。
■歴史ある登山道、銀の道を登って山頂を目指す
例年は枝折峠の駐車場に車を停め、枝折峠登山口から登り始めるのだが、2022年7月3日現在、枝折峠までの道が利用不可となっている。そのため、今回は銀山平登山口から明神峠まで登り、越後駒ケ岳を目指すコースを紹介したい。
このコースだと枝折峠登山口から登るより30分ほど余計に時間がかかるが、湖山荘がある銀山平という土地の歴史を感じられる味わい深い道を通ることができる。というのも、かつてこの地域には銀の鉱山があり、江戸幕府が厳しく管轄していた。その銀を下界に運ぶ唯一の道が、この「銀の道」だったのだ。道自体は一般的な登山道と変わらず、ブナを中心とした落葉樹の森を登る。7月であれば雪はなく、気持ちの良い森歩きができる。