昔から人が集まる場所が苦手だった。ひとりが好きで、他人にあまり干渉されたくない。そんな子どもだった私が、どうして山小屋で働いてきたのか。
山小屋では一人でしっぽりしたっていいし、仲間とワイワイしてもいいし、自由に過ごしていい。別にこうするのが正解とかもない。でも、意識せずともみんなが自然に空間を共有する。短い時間ではあるけれど、スタッフと宿泊者は同じご飯を食べて、今だけの景色や時間も共有する。
街ではすれ違っていく私たちだけれど、山では自然に交わって共有するこの瞬間がたまらなく好きなのだ。山小屋にはその魅力が詰まっていると思う。だから、そんな場所を自分の手で作りたい。作るなんておこがましいか。そんな場所に自分が居たいだけかもしれない。
ちなみに、山から下りたらそれぞれがバラバラに帰路に着く。この距離感も、また心地いい。
■私と山小屋との出会い
初めてアルプスの山に登って、山小屋に泊まったのは、中学生のとき。
学校登山で、北アルプスの唐松岳に登った。歩いても歩いてもてっぺんには着かなくて、次第に会話もなくなって、支給されたカロリーメイトと氷砂糖をちびちび食べた。ジャージ姿で一列に連なって歩くなんて軍隊みたいだな、なんて思いながら歩いた。
やっと山小屋に到着して疲れ果てていたけれど、夕方外に出てみたら、いつも見ている友人の夕陽に照らされた横顔がとても綺麗だった。それからみんなで「いただきます」と言って食べたカレーライスも美味しくて、山の上にこんな世界があるのかと思った。