■狩りの瞬間を目撃!

 電光石火の如く黄色い嘴を水中に突き刺したかと思うと、魚がダイサギの口元で踊っていた。

目にも止まらぬダイサギの狩り

 捕らえられた魚には、美しいパーマークが輝いている。ヤマメだ。禁漁となって数ヶ月が経過したため、警戒心がかなり薄れていたのだろうか。いや、ヤマメの警戒心を凌ぐダイサギの素早さだったのかもしれない。ヤマメは、最後の力を振り絞り、体をくねらせてダイサギから逃れようとする。

パーマークが美しいヤマメを見事捕らえたダイサギ

 しかし、ダイサギは、ヤマメに寸分の隙も与えない。頭部をしっかりと押さえつけ、ヤマメに最期の時が来たことを知らしめる。ヤマメも観念したようにおとなしくなっていった。

くちばしの根元でしっかりとヤマメの頭部を押さえつける

 獲物がすっかり弱ったことを確認すると、ヤマメの頭部から喉へと放り込んだ。カワセミなどの魚を食す野鳥は、魚のえらや鱗が引っ掛からないように頭部から飲み込む。この日もダイサギは、その定石通りの行動だった。

ヤマメを頭から飲み込もうとするダイサギ

 ダイサギの首の一部分が太くなり、それが徐々に下に移動していく。長い首をヤマメが通過していく様子がはっきりと目に見える。思わず筆者もゴクリと唾を飲む。

喉が膨らむダイサギ。ヤマメが首を通過していくのがよくわかる

 ヤマメが胃袋の中へと運び込まれると、ダイサギは満足したのだろうか。再び次の獲物を探しに別のポイントへと飛び去った。ダイサギには、釣り人のように自分なりのお気に入りポイントがいくつかあるのかもしれない。ダイサギが去った後には、何事もなかったように案内川に静寂が訪れた。

 シラサギなどの野鳥から身を守ってきた渓流魚の禁漁期が、間もなく終わる。今度は、釣り人たちとの知恵比べだ。ヤマメらとの戦いに勝てるかどうかは、釣り人の腕次第である。